バイデン米政権、ロシアに追加制裁、輸出管理も強化

(米国、ウクライナ、ロシア、ベラルーシ)

ニューヨーク発

2022年09月20日

米国のバイデン政権は9月15日、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、ロシアの主要な軍事組織やハイテク産業の企業など複数の事業体・個人を制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。また、ロシアとベラルーシに対する輸出管理も強化した。

今回の制裁は財務、国務、商務各省がそれぞれの権限の下で発動した。SDNに関しては、財務省が事業体2組織と個人22人外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを、国務省が事業体31組織と個人22人外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを指定した。財務省が指定したSDNには、ウクライナでロシア軍とともに戦闘に参加した準軍事組織とその幹部や、ロシア中央銀行が所有するカード決済網運営事業者の幹部が含まれる。国務省指定のSDNには、宇宙やエレクトロニクス産業のロシア企業が入っている。

制裁対象には、在米資産の凍結や米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止などを科す。SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる(注2)。各省のSDN指定の詳細については、財務省のウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます国務省のファクトシート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

商務省も9月15日、ロシアとベラルーシ向けの輸出管理を強化する一連の措置を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。正式には翌16日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示したが、措置は15日に有効となっている。同省は今回、輸出管理規則(EAR)でEAR99に分類される品目のうち、化学・生物兵器の生産・開発に使用され得る品目や量子コンピュータに関連する機器などについて、ロシアまたはベラルーシに輸出・再輸出・国内移送する際の許可要件を新設した(注3)。これら品目群には、米国製のソフトウエア・技術を用いて米国外で生産された製品についても、事前の許可申請を求める、いわゆる外国直接製品(FDP)ルールも適用する。そのほか、軍事エンドユーザー規制の拡大などを行った。

一方、財務省は商務省による措置を補完するかたちで、米国からロシア国内の個人・事業体への量子コンピュータサービスの輸出、再輸出、販売、提供を禁止すると発表した。所在地を問わず、米国人による輸出なども同様に禁じる。これはジョー・バイデン大統領が4月に署名した大統領令(2022年4月7日記事参照)に基づく措置で、10月15日(米国東部時間)に有効となる。

2022年2月以降に米国が発動した対ロシア・ベラルーシ関連の制裁については、添付資料を参照。

(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。

(注2)ウクライナ情勢に関する財務省の制裁の全容は、同省の「ロシア有害対外活動制裁」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます「ウクライナ/ロシア関連制裁」のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。制裁対象に指定された個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでCountry欄のRussia、リスト欄でSDNを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。

(注3)ロシアとベラルーシ向けの輸出管理については、既に4月8日付で、EAR99以外の規制品目リスト(CCL)に掲載のデュアルユース品目を両国に輸出・再輸出・国内移送することが実質的に禁止されている(2022年4月12日記事参照)。

(甲斐野裕之)

(米国、ウクライナ、ロシア、ベラルーシ)

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