米国、夏休み最後の連休期間の航空需要がコロナ禍前水準を超える

(米国)

ニューヨーク発

2022年09月08日

米国国土安全保障省運輸保安局(TSA)が毎日発表している空港のセキュリティチェック通過者数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、92日から5日の「労働者の日(Labor Day)」の祝日までの4日間における空港利用者数は876万人となり、新型コロナウイルス感染拡大前である2019年(862万人)を1.7%上回った。

米国では、9月の第1月曜日の「労働者の日」の翌日から新学期や新年度を迎える場合が多く、例年9月上旬が夏休み最後の連休となる。航空需要は5月時点で新型コロナ禍前の水準の9割まで回復していたが(2022年5月24日記事参照)、今回の連休でさらにその回復が鮮明となった。全米の車両走行距離も、5月時点で既に新型コロナ禍前の水準を超えており、規制上の移動制限撤廃に加え、人々の移動に対する心理的なハードルも低下しているとみられる。また、ダラス連邦準備銀行が9月6日に公表したレポート外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、サービス部門の需要は、新型コロナ感染がこれまで消費行動に与えてきた影響が今後薄れるにつれ、一段と高まる可能性があると指摘されている。

他方、こうしたサービス需要への足かせとなり得るのが長引く物価上昇だ。8月の消費者物価をみると、ガソリンや航空運賃は前月比で8.0%低下し落ち着いてきている一方、全体では前年同月比で8.5%上昇といまだ高い水準にある(2022年8月12日記事参照)。ダラス連邦準備銀行は、2021年の物価上昇の主な要因だった財部門の物価上昇はここ数カ月で緩やかになっており、さらに減速する可能性が高いとする一方で、サービス部門のインフレは今後も持続すると予想している。特に家計の固定費の中でも高い比重を占め、最近そのインフレが加速している家賃については、2023年半ばまで高い伸びが継続するとしている。家賃など固定費が上昇すれば、そのほかの財やサービスに回せる予算が減少し、結果的に航空サービスなどの需要回復を減退させる可能性がある。

913日には、8月分の消費者物価が公表される。家賃をはじめとする物価の動向に引き続き注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

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