EU・米産業界、貿易技術評議会での対中関係やAI政策で進展期待

(EU、米国)

ブリュッセル発

2022年05月06日

EUと米国は5月16~17日、貿易技術評議会(TTC、2021年9月30日記事参照)の第2回閣僚級会合をパリで開催する。それに先立ち、ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)と米国商工会議所は5月3日、TTCで両者の関係深化が求められる分野についての提言書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を共同で発表した。

ビジネスヨーロッパなどは、ロシアのウクライナ侵攻を受けた対ロ制裁や、米国からのEU向け液化天然ガス(LNG)供給、EUと米国間の個人データの移転に関わる枠組みについての合意(2022年3月28日記事参照)などを例に挙げて、EU・米国関係が緊密さを増していることを歓迎。同様に、TTCを通じて、貿易やデジタル分野のその他の課題でも両者の協力を促進させるべきだと述べた。その上で、第2回会合で成果を出すべき重要分野として、(1)第三国との関係、(2)人工知能(AI)と新興技術、(3)安全なサプライチェーン、(4)持続可能性とエネルギー安全保障、(5)適合性評価と相互承認協定、(6)TTCへのさまざまな利害関係者の参画の促進を挙げた。

このうち、(1)第三国との関係については、EUと米国が第三国の制限的な措置に強力に対抗し、特に中国によるデータの移転の管理や強制技術移転、不公正な商慣習などについて効果的で短期的な対抗策を調整するため、より努力する必要があるとした。さらに、他の新興国での市場アクセス、知的財産権の保護やデータの越境移転を阻む政策・規制にも団結して対抗すべきだとした。(3)安全なサプライチェーンについては、依存度を評価する段階からEU・米双方で、貿易上の障壁撤廃や貿易促進策の採択を含む協力深化や生産増加を奨励する具体的な方法に焦点を当てるべきであり、それには産業界との緊密な連携が必要だと述べた。

AI分野でEU・米国の協力深化、主導権を握ることに期待する声も

欧州の情報通信技術(ICT)関連産業団体デジタルヨーロッパのセシリア・ボーンフェルド・ダール事務局長も4月29日、TTC第2回会合を前に、米国のAIに関する議員連盟議長であるジェリー・マクナーニー下院議員(民主党所属)とともに共同声明を発表した(デジタルヨーロッパの発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。両氏は、AIは気候変動やサイバーセキュリティー、保健・医療など幾つかの国際的な重要課題に対応するものであり、米欧双方で企業が新技術開発に取り組んでいるが、異なる規制方法が取られれば、米欧の協力深化や技術の進歩を妨げかねないと指摘。TTCはイノベーションの促進だけでなく、AI技術の迅速な活用、雇用創出や経済成長につながる場との期待を示した。その上で、EU、米国双方に対して、交渉ではAIの基準について足並みをそろえ、AIのリスク評価に関する共通した原則を設定することに重点を置くべきだと提言。また、AI分野のスキルギャップを埋めるべく、人材開発に取り組むべきだと強く訴えた。両氏は声明で「共通の価値観を持つEUと米国はAIの責任ある有益な活用について、国際的な基準を策定する好機にある」と述べ、EUと米国が協力し、AI分野で主導権を握るべきだとした。

(滝澤祥子)

(EU、米国)

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