在上海上場企業の半数近くは稼働率30%未満

(中国)

上海発

2022年05月16日

上海市では、企業の操業再開の動きが続いる。浦東新区の呉強副区長は5月7日の記者会見で、テスラは4月19日に操業を再開(2022年5月2日記事参照)して以降、30日までに1万台の完成車を生産したとして、操業再開への取り組みが順調に進んでいることを強調した。しかし、再開したとしても、サプライチェーン上の企業に1人でも感染者が発生すると、関連企業の操業に影響が出る可能性がある。実際、5月8日にはテスラのサプライヤー企業で米国企業のアプティブ(Aptiv)の嘉定区の工場で新型コロナウイルス感染者が発生し、感染者と濃厚接触者が移送された。濃厚接触者以外の従業員は2回のPCR検査を行い、全員陰性だったことから、政府の評価と指示を待っているが、生産は停止していると報じられている(「第一財経」5月10日)。

中国の経済メディア「上海証券報」は5月9日、新型コロナウイルス感染拡大による上場企業への影響に関し、主に長江デルタ地域の上場企業667社(注)の回答に基づく調査結果を発表した。

稼働率について、回答企業の46.8%が「稼働率90%以上」、約3割が「稼働率60~90%」で、「稼働率60%以下」と回答した企業は2割超だった。しかし、対象を上海所在の企業142社に限定すると、「稼働率90%以上」と回答した企業は11.3%にとどまる一方、「稼働率30%以下」が48.9%と半数近くを占めた。そのほか、「稼働率30~60%」は16.9%、「稼働率60~90%」は23.9%だった。

上海では、操業再開が認められる「ホワイトリスト」の対象企業が拡大し、操業再開率は上昇し続けてはいるが、ホワイトリスト企業も困難に直面している。専用設備メーカーの責任者は「従業員の住まいは各区に分散している。居住区から従業員を工場に移動させようとしている(操業再開に対応させようとしている)が、その取り組みは遅々としているのが現状だ。上海市経済信息委員会、商務委員会、各区および各産業園区など多くのルートを通じて、できるだけ早く操業再開を目指している」と述べた(「上海証券報」5月9日)。

(注)アンケートは5月7日までの回答のもの。回答企業のうち、上海市内の企業が142社、江蘇省内の企業が258社、浙江省内の企業が200社、安徽省内の企業が35社で、長江デルタ地域の企業が95.2%を占める。長江デルタ地域に関し、中国共産党中央委員会と国務院が2019年12月に発表した「長江デルタ区域一体化発展計画綱要」では、当該計画の対象地域は上海市、江蘇省、浙江省、安徽省とされている(2019年12月23日記事参照)。

(高橋大輔)

(中国)

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