長期気候戦略で省別の炭素排出上限設定、脱石炭連盟(PPCA)に加盟
(チリ)
サンティアゴ発
2021年11月16日
英国グラスゴーで開催の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の開会式(10月31日)で、チリのカロリナ・シュミット環境相は同国が2年務めたCOP議長国を英国に引き継いだ。同環境相はCOP26期間中にフアン・カルロス・ジョベト鉱業兼エネルギー相、アンドレス・クブ科学技術相とともに、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)のパトリシア・エスピノサ事務局長と会談し、チリが2050年までにカーボンニュートラル(炭素中立)を達成するための長期気候戦略「La Estrategia Climática de Largo Plazo(ECLP)」を提出した。主な内容は次のとおり。
○2025年まで
- 石炭火力発電所の65%を閉鎖する。
- 1万~1万5,000ヘクタールの湿地を増加する。
○2030年まで
- 国内発電全体の80%を再生可能エネルギーにする。
- 大規模鉱山でゼロエミッションを実装する。
○2040年まで
- 全ての石炭火力発電所を閉鎖し、他のエネルギーに置き換える。
- エネルギー源の20%をグリーン水素由来にする。
○2050年まで
- 国内発電の100%をゼロエミッションにする。
- 鉱業、産業分野からの炭素排出を70%削減する。
ECLPでは、2020~2030年の国内の炭素排出量上限を11億トンに設定し、チリ政府各省に対して排出量上限を定めている。最も多い運輸通信省(29%)に次いで、エネルギー省(26%)、鉱業省(16%)、農業省(11%)、住宅省(9%)、保健省(5%)、公共事業省(4%)と続く。チリが省別の炭素排出目標を定めたのは今回が初めて。加えて、150を超える国や都市、地域、企業で構成する世界的なエネルギー転換の促進を目的とした脱石炭連盟(PPCA)にチリが加盟することも発表された。
欧州2港とグリーン水素輸出に向けた協力覚書締結
また、ジョベト鉱業兼エネルギー相は、欧州の主要な港であるアントワープ港とゼーブルージュ港の2港とともにグリーン水素輸出に向けた協力覚書(MOU)に署名した(2021年11月10日記事参照)。チリは既に、2021年2月にシンガポール政府、3月にはオランダのロッテルダム港と同様のMOUを締結している。豊富な再エネ資源を生かし、将来のグリーン水素の生産、輸出国家としての地位を狙うチリが(2020年11月12日記事参照)、COPの舞台でも着々とその準備を進めている様子が垣間見られた。
(岡戸美澪)
(チリ)
ビジネス短信 8b13c5f7e1e3b062