欧州理事会、欧州委とともに新型コロナ対策での加盟国間の連携強調

(EU)

ブリュッセル発

2020年11月04日

欧州理事会(EU首脳会議)は10月29日、新型コロナウイルス対策に関する非公式会合をオンラインで開催し、さらなる協調策を決定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。開催に先立ち、欧州委員会は前日の28日、EUレベルでの検査戦略勧告PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)など一連の新型コロナウイルス対策を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。非公式会合後に欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長と、欧州委のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長がそろって会見し、加盟国間の結束を強調した。

結束を強調するも、一部足並みそろわず

会見でミシェル常任議長は、欧州理事会が検査戦略勧告を今後の基礎とし、PCR検査より結果が早く出る抗原検査のEUレベルでの早期承認を進めることで合意。検査結果の加盟国間での相互承認も目指すとした。これに関連し、欧州委は加盟国への供給を念頭に、抗原検査キットの購入予算として1億ユーロを確保したと28日に発表していた。

また、多くの加盟国で入国時に入力を義務付けているフォーム(Passenger Location Form:PLF)に関しても、欧州委が目指すEUレベルの共通化を欧州理事会として支持した。欧州委は2020年末のEU全域での実施を目標に、11月から実験的に開始するとしている。

欧州理事会は、欧州委が進めているワクチンの共同調達に関しても、全加盟国が同一時期に人口に応じて同一条件でワクチン供給を受けることで合意した。欧州委は既に3社と事前購入の合意をしているが(2020年10月9日記事参照)、さらに4社と協議中で、うち3社とは合意が近いことも明らかにしている。

このほか、欧州委は、国境を越えた患者の輸送に対しても2億2,000万ユーロのEU予算を提供するとしている。

欧州理事会は欧州委とともに加盟国間の結束を強調したが、公衆衛生に関する権限の多くがEUではなく加盟国にあることから、加盟国間の政策にはばらつきも目立つ。EU理事会(閣僚理事会)は移動制限に関する共通基準に関する勧告を採択し、さらに加盟国への検査データの共有や検疫・自主隔離期間の共通化などを求めているが(2010年10月14日記事参照)、まだ十分な調整がなされていない。また、欧州委も各加盟国が開発する接触追跡アプリに相互運用性を求めているが、一部の加盟国は応じておらず(2020年10月20日記事参照)、欧州理事会はあらためてこうした政策での加盟国間の協調を求めているのが現状だ。

(吉沼啓介)

(EU)

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