外出禁止令長期化で経済悪化への国民の懸念高まる

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2020年06月09日

現地民間調査会社のダレッシオおよびベレンシュタインは6月2日、共同で最新の世論調査を発表した。同調査によると、「前年と比べてアルゼンチンの経済情勢が良くなるか」との設問に対して、「良くなる」が24%、「悪くなる」が73%となった。アルゼンチンでは、2020年当初から年間GDPのマイナス成長が予測されていた。ただ、外出禁止令が発令された3月時点の調査結果では、「良くなる」が44%、「悪くなる」が53%との回答だったことと比べても、今回の調査では悲観的な見通しが20ポイント加わるなど、新型コロナウイルス感染拡大の影響によって、国民の経済回復に対する期待はさらに低くなっていることが確認できる。

また、5月28日付の現地民間調査会社エコラティーナの世論調査によれば、「経済情勢と新型コロナウイルス感染拡大」のどちらを心配するか、との設問に対して、外出禁止令が発令された直後の3月下旬には、「経済状況」が16.2%、「感染状況」が79.5%だったが、今回の調査結果では、その数値がそれぞれ50.4%、44.7%と逆転した。新型コロナウイルス感染拡大のピーク期は6月下旬とみられているが、国民は外出禁止令に伴う経済活動の制約が、国内経済に与えるマイナスの影響を懸念していることが分かる。5月下旬から国内各所では、外出禁止令の長期化に抗議するデモも散発し始めている。

アルベルト・フェルナンデス大統領は6月4日、ブエノスアイレス市および近郊のブエノスアイレス州40都市で構成されるAMBAなど新型コロナ感染拡大が確認されている地域のみにおいて外出禁止令を6月28日まで延長することを発表した。外出禁止の期間は100日を超える見通しになった。中南米では比較的新型コロナウイルスの感染者数が抑えられてきたアルゼンチンだが、経済活動の制約を伴う外出禁止令の長期化を前に、世論も変化しつつある。

フェルナンデス大統領は、「感染者数が今ピークに達しているのかどうか分からない。問題は解決していない」と楽観視しないよう、訴えている。併せて、「緊急家庭収入(IFE)」(2020年3月26日記事参照)および「雇用および生産のための緊急援助プログラム(ATP)」(2020年5月18日記事参照)といった経済支援策は今後も継続する、と表明した。

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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