日本食品のフランス市場参入、食文化とバイヤーニーズの理解がカギ
(フランス、日本)
欧州ロシアCIS課
2019年07月23日
ジェトロが7月9日から12日にかけて、東京、金沢、熊本で実施した欧州の日本食品市場セミナーで、ジェトロ・パリ事務所の岡部純コーディネーターは、日本食品のフランス市場参入には、現地の食文化を考慮した効率的な戦略の立案と商談前の準備が重要だと述べた。ドイツ市場(2019年7月22日記事参照)、イタリア市場(2019年7月23日記事参照)に続き、フランス市場について講演概要を報告する。
国立統計経済研究所(INSEE)によれば、2017年のフランスの世帯消費に占める食品・飲料の割合は11%で、また消費者金融会社ソフィンコ(Sofinco)によると、2017年の世帯の食費は月平均385ユーロだった。
フランスでは、好きな料理上位5つのうち4つを肉料理が占め、牛肉・鶏肉が安価なことから、魚を食べる機会が少ない。年間消費量はジャガイモがパンを上回る。2016年のジェトロのアンケート(903KB)によれば、日本食はフランス人の好きな料理(国別)の6位(21%が好きと回答)で、5位のインド料理はさておき、4位のスペイン料理を抜くのは容易ではない。
2017年の日本からフランスへの農林水産物・食品の輸出額は75億円で、EU向けではオランダに次いで多い。上位品目はアルコール飲料が33億3,000万円(うちウイスキーが27億8,000万円)で、しょうゆ(3億9,000万円)、ソース混合調味料(3億3,000万円)の順だ。輸出額は順調に伸びているが、日本食品の販売先(日系、アジア系、現地系の輸入卸)は限られ、食文化に浸透していない商品は、外食などを通じて認知度を高めるなどの市場開拓が必要だ。
輸入卸経由の主な流通先は以下のとおり。
- 外食:日本食レストラン(すし・焼き鳥をセットで出す現地系が約9割)、フレンチレストラン(日本人シェフも活躍)、日本産ウイスキーを出すバー、日本茶を出すカフェやサロン・ド・テ
- 小売り:フランス人も利用する日系・アジア系スーパー、現地系スーパーマーケット・ハイパーマーケット(棚代が発生、棚の維持は容易ではない)、百貨店・高級食材店、酒専門店(多くが日本産ウイスキーを、一部は日本酒も扱う)
- 中食:パック・冷凍ずしを売る総菜店(器械握りのおかげで、すしは米国に続きフランスでも普及したが、近年はカルフール大型店内に職人が握る店ができ好評)、ケータリング
- 製造:日本食材を利用する菓子店、メーカー
フランス食品市場のキーワードは「オーガニック」「フリー食品(グルテン、ラクトーズなど)」「ベジタリアン・ビーガン」。有機食品市場では、大手流通小売りグループによるプライベートブランド(PB)や専門店の展開など、シェア獲得競争が激化。
商談用サンプルは極力、新しいものを用意することが肝要で、賞味期限は船便に搭載予定の商品の場合は最低でも8カ月、ベストは1年以上というのがバイヤーの要望だ。バイヤーのニーズに関しては、オーガニック茶の生産現場の視察というニーズに応えてバルク単位での成約に至った成功例、サイズ・水揚げ量が毎年異なるため安定供給のニーズに応えられずスポット取引にとどまったホタテ貝柱の失敗例がある。ジェトロの商談会(開催予定はジェトロウェブサイト「イベント情報」参照)は、日本食品に関心が高いバイヤーを招致しており、成約可能性が高いため有用だ。
(上田暁子)
(フランス、日本)
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