4月12日のノー・ディール回避確定するも、英議会情勢はなお流動的

(英国、EU)

ロンドン発

2019年04月11日

英国のEU離脱(ブレグジット)の再延期を協議した特別欧州理事会(EU首脳会議)は4月11日未明、英国とEU双方が離脱協定を批准すればその翌月1日に離脱することを可能にしつつ、最長で10月31日まで離脱を延期することで合意した(2019年4月11日記事参照)。英国のテレーザ・メイ首相は欧州理事会後の記者会見で、「可能な限り早急に(離脱協定と政治宣言から成る)合意とともに離脱すべきという考えに変わりはない」と強調した。

英国では4月8日、延期の期限などに関する決定権を議会が握る法案(2019年4月4日記事参照)が上院を通過し、法制化されていた。法案には当初、英国が要請した期限と異なる期限をEUが提示すれば、議会がその是非を採決するという条項があったが、法案が可決されずに時間切れで合意なき離脱(ノー・ディール)に陥る懸念から、上院がこの部分を削除。メイ首相は欧州理事会のドナルド・トゥスク常任議長に宛てた4月5日の書簡で、6月30日までの離脱延期を要請していた。EUが今回提示した期限はそれと異なるものだったが、上院の法案修正により、メイ首相は議会に諮ることなく最長10月末までの延期に合意し、4月12日のノー・ディールは回避された。

今回の合意では、英国が5月22日までに離脱協定を批准できず、翌日からの欧州議会選挙期間中もEUにとどまっていれば、英国は同選挙に参加する義務が生じ、参加しなければ離脱延期は5月31日までで破棄されることになった。政府は4月8日、離脱が実現していなければ5月23日を英国での欧州議会選挙の投票日にする政令を公布。各党は候補者の確定作業などに着手したが、与党・保守党のEU離脱強硬派を中心に、メイ首相への反発は一層強まっている。

4月3日から始まった野党・労働党との協議(2019年4月4日記事参照)は、1週間経っても平行線をたどったままだ。同党は恒久的なEU関税同盟などこれまでの執行部案(2019年4月2日記事添付資料参照)を主張。しかし政府は、関税同盟に残っていれば第三国と独自の通商協定を結べなくなると、受け入れていない。協議は11日も行われる予定だが、メイ首相は4月5日のトゥスク常任議長宛ての書簡で、与野党合意がまとまらなければ、議会で複数案について採決を行う考えを示している。離脱の再延期により時間ができたことで、早期の妥協は一層難しくなるかもしれず、議会情勢は極めて流動的だ。

(宮崎拓)

(英国、EU)

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