マドリードは右派が市政奪回、バルセロナは急進左派系市長が続投

(スペイン)

マドリード発

2019年06月26日

スペインの5月末の統一地方選挙(州議会・市議会)の結果を受けて、全国の市長が6月15日に新たに選出された。市議会選挙では、中央政権与党の社会労働党(PSOE)が合計29.3%の得票率を得て、後続の中道右派・民衆党(PP、22.3%)、新興中道右派・市民党(C’s、8.3%)を大きく離し、大部分の市議会で第1党となった。しかし、その後の市長選出(議員の互選による選任)では、第2党以下のPPがC’sと新興極右ボクス(VOX)の右派2党の支持を得て市議会の過半数を制し、マドリードやマラガなど多くの主要都市で市政権を獲得。多党制ならではの逆転現象が目立った。

マドリード:右派政権奪回で市中心部乗り入れ規制が白紙化か

マドリード市でも、現職マヌエラ・カルメナ氏率いる左派地域政党が第1党となったが、第2党のPPがC’sとVOXの支持を得て政権を奪回。ただし、表向きにはPPとC’sの連立となっている。ホセルイス・マルティネス・アルメイダ新市長は就任後、前市長が環境対策として導入した市中心部への従来車(ハイブリッド車や電気自動車などの環境対応車以外の車種)の乗り入れ禁止について、「区域内の大気質が改善されたという客観的データがない。一方、商店や飲食店の売り上げ低下は税収や雇用統計から見ても明らか」として、規制を見直す意向だ。

バルセロナ:元フランス首相の「造反劇」で独立賛成派を阻止

バルセロナ市議会選挙では、独立賛成派のカタルーニャ共和左派(ERC)が第1党となったが、僅差で第2党となった急進左派ポデモス系の地域政党のアダ・コラウ現市長がカタルーニャ社会党(PSC)やC’sから造反した一部市議の支持を得て、市長に再任された。ホテルの新規開発規制で物議を醸した急進左派の続投に猛反対するC’sからの一部議員造反を率いたのは、比例代表名簿首位、いわゆる「市長候補」として鳴り物入りで出馬した元フランス首相のマニュエル・バルス氏で、造反は「独立賛成派の市長誕生を阻止するため」と述べた。同氏はバルセロナ市幹部職に就任する公算が高い。なお、バルス氏はバルセロナ出身で、20歳の時にフランス国籍を取得した。EUでは、EU市民は他のEU加盟国の地方選挙で投票や立候補をすることができると定められている。

ここ数日、政権交渉が本格化している自治州についても、右派ブロックが第1党のPSOEを抑えて政権を獲得する州が多いとみられる。

スペインでは4月末からの1カ月で、国、州、市、欧州議会と4種類の選挙が相次いで実施された。国王は6月6日に現首相のペドロ・サンチェス氏(PSOE)を首相候補に指名したが、少数単独政権を目指す同党は野党からの明確な支持を得られず、信任投票は7月半ばにずれ込みそうだ。

(伊藤裕規子)

(スペイン)

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