塗料の輸入手続き: 日本
塗料(ペイント類)の輸入手続きについて教えてください。
有害化学物質を含む塗料は輸入できません。一般消費者が小売店等で購入する塗料は家庭用品品質表示法により品名、色名、成分、用途等を表示することが義務付けられています。また、スプレータイプの塗料は、エアゾール製品としての規制を受けます。
I. 化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)
- 第一種特定化学物質(輸入不可)
化学物質の審査および製造等の規制に関する法律(化審法)施行令第7条に掲げる第一種特定化学物質が使用されている塗料は輸入できません。これらが含有されていないことを確認する必要があります。塗料に使用される可能性がある第一種化学物質は下記のとおりです。
- ポリ塩化ビフェニル
- ポリ塩化ナフタレン
- アルドリンおよびDDT
- ディルドリン
- クロルデン類
- ビス
- 2-(2H-1,2,3-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ジ-tert-ブチルフェノール
- テトラブロモジフェニルエーテル
- ペンタブロモジフェニルエーテルなど
- 第二種特定化学物質(届出)
第二種特定化学物質およびその含有製品の取り扱い事業者は、化審法第35条に基づき届出等を行うほか、化審法第37条に基づき、容器、包装または送り状に当該第二種特定化学物質による環境の汚染を防止するための装置等に関する事項を表示しなければなりません。塗料に含有される可能性のある第二種化学物質は、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリブチルスズ化合物などです。
II. 家庭用品品質表示法
家庭用品品質表示法は、一般消費者が製品の品質を正しく認識し、その購入に際し不測の損失を被ることのないように、事業者に家庭用品の品質に関する表示を適正に行うよう要請し、一般消費者の利益を保護することを目的に、1962年に制定されたものです。塗料は同法に基づく「雑貨工業品品質表示規定」に義務表示事項が定められています。一般消費者が小売店等で購入するものは、模型用等のごく少容量のものであっても表示の対象となります。表示しなければならない項目は下記のとおりです。
- 品名
- 色名
- 成分
- 用途
- 正味量
- 塗り面積
- 使用方法
- 用具の手入れ方法
- 取扱い上の注意
III. 高圧ガス保安法
スプレータイプの塗料のエアゾール容器は、高圧ガス保安法の規制を受けます。ただし、内容積が1リットル以下の容器内における液化ガスであって、温度35℃において圧力が08メガパスカルのものは同法の適用除外となります。適用除外となるためには、輸入通関に際し、「高圧ガス」の適用除外要件を検査した「試験成績書」の添付が必要です。 輸入しようとするエアゾール製品等が高圧ガス保安法の適用除外要件に該当しない場合には、都道府県が行う輸入検査(高圧ガス保安法第22条)を受けなければなりません。
IV. 有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律(家庭用品規制法)
「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」では、エアゾール剤に含まれる噴射剤や有機溶剤のうち、塩化ビニル、メタノール、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレンを規制しています。また、スプレータイプの家庭用接着剤、塗料、ワックスについては、防菌・防カビ剤として配合されていた有機水銀化合物、トリフェニル錫化合物、トリブチル錫化合物も規制しています。
エアゾール剤の規制
物質 | 規制値 |
---|---|
塩化ビニル | 検出しないこと |
メタノール | 5%以下 |
テトラクロロエチレン | 0.1%以下 |
トリクロロエチレン | 0.1%以下 |
有機水銀化合物 | 検出しないこと |
トリフェニル錫化合物 | 検出しないこと |
トリブチル錫化合物 | 検出しないこと |
V. その他
1. 建築基準法
シックハウス症候群対策として建築基準法によるホルムアルデヒトの使用面積制限があります。下記の塗料は、ホルムアルデヒドの発散がほとんど認められないことから、居室の内装仕上げや天井裏等に、シックハウス対策に係る規制を受けることなく用いることができます(2002年国土交通省告示第1113号、第1114号又は第1115号に掲げるものを除きます)。
セラックニス類、ニトロセルロースラッカー、ラッカー系シーラー、ラッカー系下地塗料、塩化ビニル樹脂ワニス、塩化ビニル樹脂エナメル、塩化ビニル樹脂プライマー、アクリル樹脂ワニス、アクリル樹脂エナメル、アクリル樹脂プライマー、合成樹脂エマルションペイント及びシーラー、合成樹脂エマルション模様塗料、合成樹脂エマルションパテ、家庭用屋内壁塗料、建築用ポリウレタン樹脂塗料、つや有合成樹脂エマルションペイント、アクリル樹脂系非水分散樹脂塗料、 オイルステイン、ピグメントステイン
2. 輸送・保管
一定量以上の危険物を輸送する場合、その容器・包装・表示・積載方法等の運送基準(危険物船舶運送および貯蔵規則)が定められています。危険物輸送の際には船長が積付検査を受けなければならず。また荷送人はコンテナ収納検査および容器検査を受けなければなりません。また、港則法では蔵置所に関する規制があります。航空法にも引火危険物としての規制がありますので、事前に輸送業者に相談してください。輸入通関後も溶剤系塗料や有機溶剤・シンナー類等は消防法に基づく危険物に該当する場合があり、各自治体条例も含めて運送・貯蔵・取り扱い規制等(許可申請・資格要件等)に注意してください。
関係機関
経済産業省:
化審法
高圧ガス保安法
消費者庁:
家庭用品品質表示法
厚生労働省:
家庭用品規制法
シックハウス対策
国土交通省:
建築基準法に基づくシックハウス対策
海上運送等に係る安全対策
航空機への危険物の持込みについて
総務省:
消防法
一般財団法人日本塗料工業会
参考資料
経済産業省:
エアゾール製品等(スプレー缶、ライター等)の輸入の取扱いについて
ジェトロ:
貿易・投資相談Q&A 「危険物国際輸送における留意点: 日本」
調査時点:2017/3
記事番号: M-010987
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