サウジアラビアで繊維・テキスタイル分野のワークショップを開催
(サウジアラビア、日本)
調査部中東アフリカ課
2025年03月13日
ジェトロは2月18~20日、サウジアラビアの首都リヤドで、サウジアラビアファッション委員会(注1、以下ファッション委員会)と共催で「サウジアラビア展示商談会・ワークショップ(繊維・テキスタイル)」を開催した(2025年2月27日記事参照)。同事業の会期初日には、両国の業界関係者らが登壇するワークショップを実施した。
ワークショップには、サウジアラビア側からファッション委員会、現地ファッションブランドCHALDENE(注2)、サウジアラビア最大手のファストファッション企業Fad intarnational
の3社・機関と、日本側から伊藤忠商事(注3)が登壇した。登壇者は「サウジアラビアのファッショントレンドを深掘りする」をテーマに意見交換を行った。
冒頭で、ファッション委員会ゼネラルマネージャーのアンマール・ボガリ氏は、サウジアラビアは国家改革戦略「ビジョン2030」により、ファッション産業を含む非石油セクターの経済成長に注力していると述べた。同委員会によれば、2023年のサウジアラビアのGDPへのファッション産業の貢献は2.5%に達し、前年の1.4%と比較して大きく成長した。同国のファッション産業は2023年に32万人が従事し、女性がその52%を占めるとしている。また、ファッション委員会は、サウジアラビアのファッション業界にバリューチェーン全体を通した支援を行い、国際的なプレゼンスを高めることに注力していると述べた。
サウジアラビアのファッション業界の変化について、Fad internationalの購買・ブランドディレクターのキャシー・アジャミ氏は、観光業の進展(注4)やソーシャルメディアを通じて国際的なトレンドの影響を受けていると指摘した。加えて、購買力があり流行に敏感な若い世代が市場を牽引しているとした。
日本製品への期待に関しては、CHALDENEの共同創業者アスマ・アル・オタイミーン氏から、品質や細部のこだわりへの評価があったほか、キャシー氏からはサステナビリティ(持続可能性)やテキスタイルの独自性などへの関心が示された。
最後に、サウジアラビアファッション業界の今後の展望について、キャシー氏は人工知能(AI)や非代替性トークン(NFT、注5)といったデジタル技術の活用や、日本のものを含むより多様な要素を素材として取り入れていくことへの期待を述べた。伊藤忠リヤド駐在員事務所ゼネラルマネージャーの中川淳一氏は、サウジアラビアのファッション市場には大きなポテンシャルがあるとしたうえで、同国のファッション業界とのさらなる協業への意欲を語った。
ワークショップの様子(ジェトロ撮影)
(注1)サウジアラビア文化省がファッション分野の産業振興のために創設した組織。
(注2)CHALDENEはファッション委員会の旗艦プログラムで、100以上の現地ブランドが参加する「Saudi 100 Brands」に参加している。Saudi 100 Brandsは、地場ファッション産業の持続可能な発展に貢献することを狙いとし、次世代ブランドの育成・支援を行っている。
(注3)同社は中東向けのテキスタイル関連ビジネスで50年以上の実績を持つ。
(注4)サウジアラビアは「ビジョン2030」で観光分野の発展も目標の1つとしており、2019年9月に観光ビザを解禁した(2019年10月1日記事参照)。
(注5)一般に、ブロックチェーン(分散型台帳技術)上で取引・発行される偽造不可な唯一無二の鑑定書・所有証明書付きデジタルデータなどと説明される。
(久保田夏帆)
(サウジアラビア、日本)
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