スリランカが産出する高純度黒鉛市場に可能性、インド政府も高い関心

(スリランカ、インド、中国)

コロンボ発

2025年03月21日

スリランカのスニル・ハンドゥネティ産業・起業家開発相とインドのサティシュ・チャンドラ・デュベイ石炭省・鉱山省担当閣外相は2月15日、インドの首都ニューデリーで、スリランカの黒鉛やミネラルサンド(砂状鉱物)など重要鉱物の確保を中心とした鉱物探査および採掘における2国間協力に関する面談を実施した。双方は、2国間協力に関する覚書の締結に向けた取り組みの加速について合意した。

スリランカは、天然黒鉛の中でも純度の高い塊状黒鉛を世界で唯一、商業的に採掘・輸出しており、インド以外の海外企業も関心を示している状況だ(2024年5月31日記事参照)。このような流れの中、ジェトロは3月11日、調査レポート「南西アジアグローバル展開可能性調査-黒鉛産出国としてのスリランカのグロ-バルプレゼンスや市場可能性-」を公開した。黒鉛は、電気自動車(EV)に使われるリチウム電池の負極材としての使用が増加しており、今後も需要拡大が見込まれる。一方で、世界最大の生産・輸出国である中国が2023年12月から輸出管理措置を実施しており(2023年10月26日記事参照2024年12月6日記事参照)、経済安全保障の観点から調達先の多角化が注目されている。

調査レポートの主なポイントは、次のとおり。

〇スリランカの黒鉛の主な輸出相手国は日本で、日本にとってスリランカは、中国、マダガスカルに次ぐ黒鉛輸入相手国。輸入単価は近年上昇しており、同国産黒鉛に対する市場の評価や需要の安定性が示唆される。

〇2023年7月、スリランカ環境省は、黒鉛を含む鉱物に関する政策「国家鉱物政策(National Mineral Policy)」の草案を発表し、黒鉛産業の活性化を図る方針。

〇同国における採掘・加工方法は環境負荷が低く、環境規制の強化にも対応できる。最近では、オーストラリア資本やカナダ資本の企業が採掘、加工、貿易の認可を取得し、まもなく商業生産を開始の予定。これらの企業は最新の採掘技術を採用しており、採掘効率の向上、黒鉛生産量の増大やコスト削減が期待できる。

〇日本企業としては、商業生産の開始や生産拡大を予定している企業や、グラフェンなどの新規用途開発に取り組む企業と連携する余地がある。

(大井裕貴)

(スリランカ、インド、中国)

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