トランプ米大統領、ベネズエラ産原油の輸入国に追加関税課す大統領令発表、4月2日以降に発動
(米国、ベネズエラ)
調査部米州課
2025年03月25日
米国のドナルド・トランプ大統領は3月24日、ベネズエラ産の原油などを輸入する国に対する25%の追加関税を定めた大統領令に署名した。国務長官の判断で4月2日以降、追加関税を発動できる内容となっている。
トランプ氏は、ベネズエラのニコラス・マドゥロ体制の政策が米国の国家安全保障と外交政策に異例で重大な脅威を与えているとして、国際緊急経済権限法(IEEPA)などに基づいて追加関税を賦課すると決めた。具体的には、米国が外国テロ組織に指定している「トレン・デ・アラグア」のメンバーが米国に入国することをマドゥロ体制が許しているなどと非難した。
追加関税は、ベネズエラで採掘・精製された原油や石油製品を輸入する国に適用する。第三国を経由して輸入する国も対象となる。原油などの生産・販売に関与する事業体の国籍は問わない。対象国は、国務長官が商務長官らと協議して決定する。中国を対象とする場合、迂回輸入を防ぐために香港とマカオからの輸入にも適用する。大統領令の発表時点で対象国は不明だが、国務省は「自国企業にベネズエラにおける(原油などの)生産、採掘、輸出を許可する全ての国は新たな関税の対象となる」とのマルコ・ルビオ国務長官の声明を発表している。トランプ氏は自身のSNSで、今回の追加関税を「2次関税」と表現した。
追加関税が発動された場合、対象国からの全ての輸入品に適用される。追加関税は既存の関税に上乗せされて賦課される(注)。追加関税は、対象国がベネズエラから原油などを最後に輸入した日から1年後に失効する。ただし、商務長官が国務長官らと協議して、それより早い日を定めることも可能だ。
トランプ政権がIEEPAに基づく関税措置を発表するのは、メキシコとカナダ、中国に対する追加関税に続いて2回目となる(2025年3月4日記事、2025年3月7日記事参照)。
なお、今回の大統領令では、ベネズエラ産原油などを米国に直接輸入する際にかかる関税については定めていない。米国財務省は3月24日、米国石油大手シェブロンにベネズエラでの石油事業を認めるライセンスの失効日を5月27日に変更した。もともとは4月3日としていた(2025年3月5日記事参照)。
(注)一般関税率〔最恵国(MFN)税率〕やアンチダンピング税(AD)、補助金相殺関税(CVD)のほか、1974年通商法301条に基づく対中追加関税、メキシコ、カナダ、中国に対するIEEPA関税、1962年通商拡大法232条に基づく鉄鋼・アルミニウム関税(2025年3月17日記事参照)などに加えて、追加関税が課されることになる。
(甲斐野裕之)
(米国、ベネズエラ)
ビジネス短信 54c24bac2a9ef2a1