ASEAN事務総長に在ASEAN日系企業がビジネス環境改善を要望
(ASEAN、日本)
ジャカルタ発
2024年07月31日
ASEAN日本人商工会議所連合会(FJCCIA)(注)は7月17日、カオ・キムホンASEAN事務総長との対話を開催し、同地域のビジネス環境改善を要望した。2008年から続く本対話は今回で16回を数え、ジェトロが運営機関の1つとして参画している。
日本側からは、各国の日本人商工会議所会頭や紀谷昌彦ASEAN日本政府代表部大使、片岡進ジェトロ副理事長のほか、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)、経済産業省、日アセアン経済産業協力委員会(AMEICC)事務局の代表者らが出席した。
ASEANは、2026年から2045年までの20年間における新たな経済統合の方向性を示す「ASEAN経済共同体(AEC)ビジョン2045」を2025年中に策定すべく、議論を続けている。FJCCIAが取りまとめた要望は、同ビジョンにおける戦略的目標を念頭に(2024年4月4日記事参照)、「シームレスにつながった単一市場と生産拠点」「グリーン経済とサステナビリティ」「デジタル経済とイノベーション、新興技術」「グローバル・コミュニティにおいて積極的な役割を果たすASEAN」「強靭(きょうじん)で豊富な人材を有するASEAN」「インクルーシブで公正な開発」の6つの要素で構成された(添付資料参照)。
今回の対話では、FJCCIAの澤村剛朗議長(マレーシア日本人商工会議所会頭)が要望の全体像を説明し、「ASEANには、自国だけでなく、地域全体で競争力を高めてほしい」と訴えた。続いて、各国商工会議所会頭が、非関税措置の最小化やASEAN域内での再生可能エネルギーに関する仕組み作り、デジタル経済の法的枠組みの整備など具体的な事項について要望した。
カオASEAN事務総長は、「FJCCIAとジェトロが対話の継続に尽力していることに感謝する。日本とASEANには、強固な経済関係を背景とする戦略的信頼の上に築かれた長い歴史がある」と本対話の意義を強調したほか、FJCCIAの要望に対し、主にデジタル経済、脱炭素化、人材育成の観点から回答した。
ASEANが2025年内の交渉完了を目指すASEANデジタル経済枠組み協定(DEFA)については、2024年末までに50%が完了するとの見通しを示しつつ、「デジタル決済やビッグデータ、サイバーセキュリティー、デジタルスキルなどについて、法的拘束性のあるかたちで協定作りを進めている。日本企業にも裨益(ひえき)するものだ」と強調した。また、脱炭素化については、ASEAN共通で取り組む課題とし、「日本企業が持つ廃棄物からのエネルギー回収技術や、二酸化炭素(CO2)を回収・貯留し有効利用する技術(CCS、CCUS)などを取り入れていく必要がある」と日本企業に対する期待感を述べた。さらに、ヒトによる労働が人工知能(AI)に取って代わられる懸念について認識していると述べ、「アップスキルやリスキリングを含む人材育成が重要だ。ASEAN進出日本企業は、自社で従業員を訓練することで、より効率的で生産性の高い人材を育てるという積極的なアプローチをとっている。日系企業の貢献を今後も期待する」とした。
今回の対話の結果については、2024年9月にラオスで開催される日ASEAN経済大臣会合でも報告される予定だ。
(注)FJCCIAは、ASEAN加盟10カ国のうちブルネイを除く9カ国10組織の日本人商工会議所により構成される連合組織。2024年7月現在の会員数は7,370社(社数はブルネイに所在する日系企業4社を含む)。
(大滝泰史、尾崎航)
(ASEAN、日本)
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