総選挙を目前に控え、治安リスクや経済への影響に懸念
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2024年05月24日
5月29日の第7回総選挙に向けて、南アフリカ共和国市民は、治安悪化のリスクと経済への悪影響に懸念を抱いている。
1994年以降の南アの総選挙は民主的に実施され、前回総選挙(2019年)も平和裏に終わった。それでも、治安のリスクは毎回払拭されず、今選挙の結果が一部の過激な有権者を刺激し、暴力的な抗議活動に駆り立てる可能性が心配される。2021年のジェイコブ・ズマ前大統領支持者による暴動の経験から(2021年7月14日記事参照)、日系企業の多くは通常の営業活動をしつつも、警戒感を高めている。特に5月20日に、憲法裁判所がズマ前大統領の立候補を否決したことで(2024年5月24日記事参照)過激な層を刺激しないか危惧されるが、5月22日時点では、駐在員の生活を脅かすような事件は起こっておらず、特別な緊張感はない。
経済への影響について、政治・安全保障専門のコンサルタント会社S-RMの分析(5月22日時点)によれば、南アの選挙結果によって、選挙後の政権構成が左傾化し、経済改革が鈍化するリスクがあるとし、今選挙は南ア経済の将来の方向性に大きな影響を与えるだろうと報告した。同社は、アフリカ民族会議(ANC)が政権を維持する可能性は高く、選挙後すぐに経済環境が急変することはないとも分析しており、ANCが便宜的に他政党と連立を組むことになった場合、議論に時間がかかると推測している。政治的な不確実性が経済に悪影響を及ぼす可能性が懸念される。ANCが最大野党の民主同盟(DA)と連立した場合、経済政策の推進が見込めるが、歴史的な背景、政治的立場の違いなどを理由に、ANCがDAと組む可能性は低いといわれている。想定されるシナリオについては添付資料表を参照。
5月14日には、南アフリカ統計局が2024年第1四半期(1~3月)の失業率を、前期比0.8ポイント増の32.9%と発表した。なお、若年層(15~34歳)では45.5%を記録した。失業率が改善しないのは停電による経済の停滞が主要因、と報じられている。この発表を受け、ANCの支持基盤である南アフリカ労働組合会議(COSATU)のマシュー・パークス報道官代理は「ANCを支持する労働組合は失業率の高さに失望した」と述べた。ANCを支持してきた有権者が、今回の選挙でどの党に投票するかが注目だ。
(堀内千浪、トラスト・ムブトゥンガイ)
(南アフリカ共和国)
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