石炭火力発電の廃止目標年限を盛り込む、G7気候・エネルギー・環境相会合

(世界、イタリア、フランス、米国、英国、ドイツ、カナダ、日本、EU、G7)

調査部国際経済課

2024年05月02日

G7気候・エネルギー・環境相会合が、イタリアのトリノで4月29~30日の日程で開催され、30日に閣僚声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが採択された。声明の主なポイントは次のとおり。

石炭火力発電の段階的廃止年限を明記

本声明では、前回会合(2023年4月18日記事参照)の閣僚声明に盛り込まれなかった、既存の排出削減が講じられていない石炭火力発電の段階的廃止に関する年限が初めて明記された。具体的には、2030年から2035年までの間、あるいは、各国の1.5度目標(2021年11月16日記事参照)が達成可能な期間内とされ、各国の状況に配慮した記載となった。

パリ協定1.5度目標に沿ったNDC策定・実施と他国との協力

G7各国・地域は、国連気候枠組み第28回締約国会議(COP28)で行われたグローバル・ストックテイク(注1)の結果に対応したNDC(注2)を、2025年初頭までにすべての国が提出することを求める。そのために、NDCパートナーシップ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますや国際機関、国連の活動を通じたキャパシティビルディングで後発開発途上国や島しょ途上国をサポートする。加えて、G7各国・地域は、2024年11月にアゼルバイジャンで開催されるCOP29より前に、パリ協定が定める透明性報告書(注3)を提出するとの目標を掲げた。

世界の再生可能エネルギー3倍目標への取り組み

2023年のCOP28では、2030年までに世界の再生可能エネルギーの設備容量を少なくとも11TW(テラワット)の3倍にするという目標が定められた(2023年12月14日記事参照)。声明では、この目標を達成するために、蓄電システム、分散型電源(注4)、スマートグリッド、デマンドレスポンス(注5)のデジタル化などの導入拡大の必要性を強調した。

プラスチック汚染対策

G7は、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにするという目標とともに、海洋環境を含むプラスチック汚染に関する国際的な法的拘束力のある文書を2024年末までに作成する作業を完了することを目指す、政府間交渉委員会(INC)(注6)を支援することを再確認した。

(注1)パリ協定1.5度目標に向けた世界全体の進捗の評価。5年ごとに実施される。

(注2)NDCとは、「国が決定する貢献」のこと。各国がそれぞれ決定し、5年ごとに国連気候変動枠組み条約事務局へ提出する。

(注3)2年ごとに各国が提出するNDCの進捗状況に関する報告書。次回の提出期限は2024年末。

(注4)太陽光発電、蓄電池、電気自動車(EV)などの需要側設備のこと。

(注5)消費者が賢く電力使用量を制御することで、電力需要パターンを変化させること(資源エネルギー庁ウェブサイトデマンドレスポンスって何?外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに基づく)。

(注6)国連加盟国、国際機関、NGOなどが参加する。

(板谷幸歩)

(世界、イタリア、フランス、米国、英国、ドイツ、カナダ、日本、EU、G7)

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