電力事情は改善傾向、発電所の改修に注力

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2024年05月09日

南アフリカ共和国政府は5月2日、国内のエネルギー利用可能率(EAF)が5月1日に65.5%に達したと発表した。コシエント・ラモコパ電力相は2021年以来となる今回のEAFについて「発電所の改修を戦略的に実行してきたことが功を奏した」と評した。今後はメデュピ石炭火力発電所4号機とクバーグ原子力発電所2号機の再稼働、クシレ石炭火力発電所6号機の併入によって、合計2,580メガワット(MW)の発電が見込まれている。南アではここ数年、電力不足が深刻化しており(2023年1月30日記事参照)、2023年3月に電力相を新たに任命して改革を行ってきた。

なお、電力公社エスコムは5月5日に計画停電の延長を発表したが、6日時点で連続40日間、計画停電は実施されていない。

エスコムは4月26日、2024年冬(注1)の計画停電の見通しについて、最大ステージ2(注2)にとどめると発表した。計画外停電については、削減幅を1万4,000MWから1万5,500MW、最大1万7,000MWの範囲内に抑えるとした。2023年の同時期の計画停電はステージ2から4(注3)の間で実施され、計画外停電の削減幅は1万5,000MWから1万6,500MW、最大1万8,000MWだったことから、前年よりも電力事情は改善している。エスコムによると、2023年3月に始まった「発電事業復興計画」には幾つかの発電所改修プロジェクトを含んでおり、電力不足改善を後押ししているとした。南アは電源構成の約8割を石炭火力発電に依存している一方、15ある石炭火力発電所の多くが1960年代から1980年代にかけて建設され、老朽化が進んでいる。

また、エスコムは電力不足を補うため、引き続きオープンサイクルガスタービン(OCGTs)を含む尖頭負荷発電所(注4)を電力需要の大きい朝夕時に戦略的に稼働させる予定だ。しかし、石炭火力発電能力の回復に合わせてOCGTsの運転は縮小しており、4月のディーゼル使用量は2023年同月と比較して、50%減少した。

南アの電力不足は設備の老朽化だけでなく、エスコム内の汚職や、熟練技術者の減少、電線網の窃盗、脆弱(ぜいじゃく)なグリッドなど複雑な要因が絡んでおり、電力の安定供給に向けた抜本的な改善には時間がかかるとされている。

(注1)南半球に位置する南アの冬は6月から7月の期間を指すことが多い。

(注2)ステージ2は、計画停電が1回2時間で4日間に6回、または1回4時間で8日間に6回実施される。

(注3)ステージ4は、計画停電が1回2時間で4日間に12回、または1回4時間で8日間に12回実施される。

(注4)電力需要が高まった尖頭(せんとう)期(ピーク時)にだけ運転する発電所のこと。一般的に発電料金が割高になる。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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