政府と民間債権者、債務再編について合意ならず協議を継続

(スリランカ)

コロンボ発

2024年04月30日

スリランカ政府は4月16日、主要な海外民間債権者から構成される「アドホック・グループ・オブ・ボンドホルダーズ(以下、グループ)」と、3月下旬から4月中旬にかけて債務再編に関する初回会合を実施したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同グループは、スリランカが抱える対外債務で最大の割合を占めるソブリン債(注1)残高の約半額の債券を保有している(添付資料表1および表2の赤字部分を参照)。

政府は、初回会合で再編条件に関する合意に至らなかったため、今後数週間以内に合意を目指すとしている。政府公表資料によれば、グループ側がスリランカの将来的なマクロ経済の変動に連動させる返済条件案を提案。これをIMF担当者が非公式に査定したところ、スリランカのIMF金融支援パッケージ〔拡大信用供与(EFF)プログラム〕で設定された債務目標を持続可能に遂行できるシナリオでなかったため、政府側はグループ側に修正を求めたという。その後、グループ側は修正案を再提出したものの、再編条件に合意できなかった。

IMFアジア太平洋局長のクリシュナ・スリニバサン氏は4月18日の記者会見で、スリランカ政府と民間債権者との債務再編について「障壁はあるものの、両者は協議を継続しており、この先何らかの結論が出ることを期待している」と述べた。IMFは、すでに拠出された5億800万SDR(注2、約6億7,000万ドル)に加えて、新たな2億5,400万SDR(約3億3,000万ドル)の融資に関するIMF理事会での承認に向けて、債務再編の適時かつ適切な進捗評価などによる金融保証審査の完了を求めている(2024年4月4日記事参照)。

同グループとは別に、民間債権者のハミルトン・リザーブ・バンク(Hamilton Reserve Bank)は米国のニューヨーク連邦地方裁判所にスリランカ政府を相手取り、自身の投資財産の保護を求める訴訟を展開している(2024年3月29日付地域・分析レポート参照)。同裁判の審理は、債務再編交渉進展への配慮から2024年2月末まで停止していた。スリランカ政府側は3月1日、7月末までの審理の再停止を提案(「ブルームバーグ」紙3月1日)、これに対してハミルトン側は4月16日までの債務再編交渉の情報開示を条件として4月末までの審理停止を求めていた(「デイリー・エフティー」紙3月26日)。

格付け会社のフィッチ・レーティングスは、スリランカの長期外国通貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を2022年5月以降「RD(限定的な債務不履行)」で据え置いているが、民間債権者との関係を正常化する債務再編を完了した場合、格上げを行う可能性があるとしている。

(注1)ソブリン債とは、国債や政府機関債など各国政府や政府機関が発行または保証する債券の総称のこと。

(注2)SDRはSpecial Drawing Rightの略で、特別引出権。通貨ではないものの、その価値は米国ドル、ユーロ、中国人民元、日本円、英国ポンドの5通貨のバスケットに基づいた国際準備資産。

(大井裕貴)

(スリランカ)

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