ウクライナの2023年GDPは2年ぶりにプラス成長

(ウクライナ)

ワルシャワ発

2024年04月08日

ウクライナ国家統計局の発表(3月28日)によると、同国の2023年の実質GDP成長率は5.3%だった。外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます2022年のマイナス28.8%から大きく改善し、2年ぶりのプラス成長を記録した(添付資料表参照)。戦時下にあってもウクライナ経済が回復基調にあることを示した。2023年通年の名目GDPは6兆5,378億フリブニャ(約25兆3,013億円、1フリブニャ=約3.87円)で、物価変動の指標のGDPデフレーターは前年比で18.5%上昇した。

経済活動別でみると、製造業が前年比13.8%増加したほか、建設業(24.6%増)、情報通信業(12.9%増)、不動産業(10.6%増)がGDPの成長に寄与した。需要項目別では、家計と一般政府の最終消費支出がともに6.3%、9.0%のプラス成長を記録したほか、総固定資本形成が52.9%増と大幅な増加を記録した。

同日発表された四半期ごとの成長率によると、2023年第1四半期(1~3月)は前年同期比マイナス10.3%、第2四半期(4~6月)はプラスに転じて19.2%、第3四半期(7~9月)は9.6%、第4四半期(10~12月)は4.7%だった。

2023年通年のGDP見通しについては、ウクライナ国立銀行(NBU、中央銀行)が2023年11月2日、従来の2.9%から2.0ポイント上方修正し、4.9%のプラス成長と予想していた。また、IMFの同年11月10日のプレスリリースでも同様に、従来の1~3%から4.5%に引き上げられていた(2023年12月15日記事参照)。

順調な経済の改善を受け、NBUは2023年12月15日、主要政策金利を従来の16%から15%に引き下げたほか、3月15日にはさらに14.5%まで引き下げた。また、NBUは2024年のインフレ率見通しを従来の9.8%から8.6%に引き下げた。

NBUは4月1日、2023年の経済成長の要因を発表し、外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます柔軟な財政政策により国内の消費と投資需要が刺激されたほか、防衛と安全保障への記録的な支出による公共部門の消費拡大と、民間部門の実質所得の伸びの回復を挙げた。また、輸出の減少率がマイナス5.4%と、前年のマイナス42%から大幅に鈍化した要因として、ドナウ川の港の経由など代替輸入ルートの開発が積極的に進められたことを挙げている。その一方、戦争の影響による国内生産の制約と需要の回復により、輸入は8.5%増加した。

2024年のGDP成長率予測について、NBUは2月1日に3.6%と発表した。外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます柔軟な財政政策、内需のさらなる復調、物流能力の拡大によって経済の回復は支えられるが、依然として高い安全保障リスクと損失と破壊の規模により、成長が制限されるとした。また、2025年の成長率は5.8%、2026年は4.5%と予想した。

(柴田哲男、坂口良平、柴田紗英)

(ウクライナ)

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