米国通商代表部、対モロッコ貿易障壁を指摘

(モロッコ、米国)

ラバト発

2024年04月17日

米国通商代表部(USTR)は3月29日、2024年版の外国貿易障壁報告書(NTE)を公表した(2024年4月2日記事参照)。この中でモロッコについては、次のように指摘している。

モロッコに関する主な指摘内容

米国とモロッコの自由貿易協定(FTA)は2006年1月に発効し、2016年までに工業製品や消費財のほとんどの関税を撤廃しているが、農産品、情報技術や機械、繊維などには、関税割り当てや優遇関税措置などを適用している。特に農産品には2024年時点で関税割り当てや農業セーフガード措置を継続し、例えば、冷凍や生、冷蔵の鶏肉にもセーフガードを適用している。

技術障壁としては、車両基準(注)を理由に米国で生産される自動車のモロッコへの輸出が事実上禁止されている。モロッコ政府は2016年以降、米国安全基準準拠の自動車の輸入を認可しているが、モロッコ税関が依然として規制を行っている。

対モロッコビジネスの最大の障壁として、同国の輸入に関する新たな規制や認証に対するアクセス可能な情報が欠如しており、政府手続きに不規則性がある。特に許認可、土地使用認可、他の政府許認可の取得プロセスで困難に直面している。さらに、公共部門と取引を行う場合、決定や許認可までに長い時間待たされることがあり、厳格なプロトコールと過剰な官僚主義がその背景にある。

モロッコ当局は外貨流出を厳しく管理している。モロッコの輸入者に対し、製品輸入前に取引総額の30%までの前払いしか認めておらず、100%前払いを求める米国の輸出者にとって問題が発生している。この障害回避のため信用状を使う方法があるが、費用が掛かり、支払いに長時間掛かる。

知的財産に関するモロッコ当局の対応は不足しており、デジタル著作権侵害が問題となっている。また、地理情報システム(GIS)ではEUの厳格なルールが導入された場合、米国にはデメリットとなる。

(注)モロッコでは通常、国連欧州経済委員会(UNECE)1958年協定の車両基準を満たす自動車しか輸入を認めておらず、米国で生産された多くの自動車は事実上、モロッコ市場に参入不可。

(本田雅英)

(モロッコ、米国)

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