中国の奇瑞汽車、バルセロナでEVを共同生産へ

(スペイン、中国)

マドリード発

2024年04月26日

中国自動車大手の奇瑞汽車は4月19日、スペインの新興電気自動車(EV)メーカー・EVモーターズと、欧州市場向けのEV共同生産の合弁契約に調印した。カタルーニャ州政府外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますや複数のスペインメディアが明らかにした。バルセロナにある日産工場跡地を活用し、奇瑞のコンパクトSUV(スポーツ用多目的車)「オモダ5」とEVモーターズの電動ピックアップトラック「エブロ」の生産を行う。官民合わせて4億ユーロの投資が見込まれ、2029年には年間合計15万台の生産規模、約1,200人の雇用創出を目指す。調印式には両社幹部や州政府関係者だけでなく、ペドロ・サンチェス首相も出席した。

スペイン各紙の19日付報道によると、奇瑞は2024年秋前にも「オモダ5」の生産を始める。当初はガソリン車モデルだが、工場の電動化対応が完了次第、バッテリー式電気自動車(BEV)モデルの生産に移行し、将来的には上位車種「Jaecoo」の生産も視野に入れる。生産方式は、当初は中国から海上輸送された塗装・溶接済み構成部品を現地で組み立てるセミノックダウン方式を採用。徐々に部品製造以外の作業を全て現地で行うコンプリートノックダウン方式へと移行し、現地調達も開始するという。

今回の奇瑞による工場進出は、欧州委員会の中国製BEVに関する反補助金調査が行われる最中(2023年10月6日記事参照)に決定された。スペイン国営放送(RTVE)によると、奇瑞は2023年9月、欧州への最初の進出先としてスペインを検討する理由として、「(中国車などの)新興ブランドに対してユーザーが非常にオープンな国だからだ」と述べていた。スペインでは、中国ブランド車の輸入が急増(2024年3月28日記事参照)しており、スペイン自動車工業会(ANFAC)によると、2023年の乗用車新車登録台数(94万9,359台)に占める中国ブランド車は、前年から3.4倍の3万7,113台となった。また、新車登録台数上位5モデルに中国ブランド車が初めてランクインした。

(伊藤裕規子)

(スペイン、中国)

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