CBAMの適用基準に戸惑う声多数、ジェトロがセミナー開催

(EU)

調査部欧州課

2024年04月15日

ジェトロはドイツにおいて4月10日および12日に、EUの炭素国境調整メカニズム(CBAM)のポイントを解説するセミナーを開催した。それぞれシュトゥットガルト日本人会、およびデュッセルドルフ日本商工会議所との共催によるもので、いずれも会場の定員を上回る申し込みがあり、関心の高さがうかがわれた。セミナーでは、ジェトロの調査レポート「EU炭素国境調整メカニズム(CBAM)の解説(基礎編)」をベースに、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)とシュツットガルト商工会議所が実施したCBAMに関するアンケート結果(2024年4月1日記事参照)などを踏まえた動向を紹介した。

セミナーでは、参加者から多数の質問が寄せられた。質問内容は、ジェトロが2月に実施したヒアリング結果(2024年2月19日記事参照)と同様に、鉄鋼やアルミニウムの一次製品などの輸入に関する報告の煩雑さを指摘するものや、デフォルト値(既定値)を用いた炭素排出量の算出に関する質問が複数に及んだ。中でも目立ったのが、CBAMの適用除外に関する確認。CBAMでは「1貨物につき対象製品の価額が150ユーロを超えない場合」に限り適用除外となることから、この基準となる「150ユーロ」があまりにも少額のためほとんどの場合は、報告の対象となってしまう。またスクリュー、ボルト、ナットなどの交換部品やスペアパーツの少量輸入では150ユーロ前後の額も想定され、「1貨物ごと」の範囲など定義の明確化が求められている。「今の基準値では手間だけがかかる」と、適用除外の対象額引き上げを求める切実な声も上がった。

現在のCBAM移行期間では、7月末までは公表されたデフォルト値に輸入量を掛けたかたちでのシンプルな排出量の報告が認められているが、2024年7~9月分の輸入分にかかる報告からはより具体的な算出方法の採用が求められる。他方、CBAM規則によれば、2026年からのCBAM本格適用時には、実際の排出量を算出できない場合、デフォルト値を使用することが再び可能になる。この点についても、確認を求める質問が複数上がった。

なお移行期間中、CBAMに基づく四半期報告を原則として各四半期の1カ月後までに行う必要があるが、期限を過ぎた場合でも、報告用ポータル「CBAM移行期登録簿」を通じて加盟国当局に連絡を取ることができる。当局の「遅延提出要請」から30日以内に報告を提出すれば受理される。輸入者またはその間接的通関代理人が必要な報告を怠った場合は、当局から通知がある。詳しくは欧州委員会のCBAMサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照のこと。

(安田啓)

(EU)

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