カザフスタンの記録的な洪水被害、長期化の恐れも

(カザフスタン、ロシア)

タシケント発

2024年04月26日

カザフスタンで3月下旬に発生した記録的な洪水による被害は長期化の様相を呈している。多くの国民が被害に遭っているほか、6月に予定されていたアスタナ国際フォーラムの中止が発表されるなど、ビジネスへの影響も出ている。

急激な気温上昇によって各地で大量の雪どけ水による大規模な洪水が発生し、堤防決壊や河川からの越水によって町や集落が浸水し、同国全17州のうち、アクトべ、アクモラ、アティラウ、アバイ、ウリタウ、カラガンダ、北カザフスタン、コスタナイ、西カザフスタン、パブロダルの10州で非常事態宣言が発令された。

カザフスタンのカシムジョマルト・トカエフ大統領は4月6日に国民に向けたテレビ演説を行い、今回の水害が過去80年で最大規模のものと述べ、オルジャス・ベクテノフ首相を長とする洪水対策本部を設置し、人命救助優先にあらゆる対策措置を講じるとともに、被災者への全面支援を約束した(大統領府ウェブサイト4月6日)。また、同大統領は13日に自身のSNSのX(旧Twitter)のアカウントに、6月13~14日に開催予定のアスタナ国際フォーラム(2023年6月22日記事参照)を中止し、2025年に延期することを決定したと投稿した。理由について、大災害の影響の排除と国民の支援に財源を割り当てる必要があるためとしている。

カザフスタン非常事態省の発表(4月19日)によると、洪水により延べ11万8,000人が避難し、約6,000戸の住宅が浸水した状態で、8,700人以上が避難所生活を強いられている。

23日の現地メディアの報道によると、アクモラ、アバイ、ウリタウ、カラガンダ、コスタナイ、パブロダルでは、河川の水位が徐々に低下しており、状況は安定しつつある一方、西カザフスタン州では新たな水害が懸念されている。

4月5日にロシア南部の都市オルスクで大きな被害を出した洪水がウラル川を伝って到来することが予想されたため、下流域の西カザフスタン州都オラル市、アティラウ州都アティラウ市の堤防の補強を州政府、非常事態省、国防省が中心になって急ピッチで進めていたが、21日に洪水がオラル市に到達、危険水位を越え、補強した堤防が決壊。農園地帯の住宅が浸水するなど、新たな被害が出始めている。現地専門家の予測では、アティラウ市には5月初めに到達するとみられ、しばらくは余談の許さない状況が続くもようだ。

(増島繁延)

(カザフスタン、ロシア)

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