米商務省、金融制裁対象の特別指定国民(SDN)に輸出管理規制を課す最終規則発表

(米国)

ニューヨーク発

2024年03月22日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は3月20日、財務省外国資産管理局(OFAC)が管理する14の制裁プログラムによって指定される「特別指定国民(SDN)」に対して、輸出管理規則(EAR)に基づく最終使用者(エンドユーザー)規制を課す最終規則を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。翌21日付の官報外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで公示し、同日から有効になった。

BISが管理するEARは、軍事用としても民生用としても利用可能なデュアルユース品目などに対して、エンドユーザーやその用途(エンドユース)に合わせて輸出を規制する。それに対し、OFACが管理する金融制裁は、SDNに対する在米資産の凍結や、米国人との資金・物品・サービスの取引禁止など科すもの(注)で、役割が異なる。これまで、SDNに指定された個人や事業体も、EAR上の規制対象となるよう個別に指定されてきたが、今回の最終規則によって、SDNに指定された特定の事業体などは自動的にEAR上でも規制対象となる。例えば、ロシアのウクライナ侵攻に関連してSDNに指定された個人や事業体は、EARに基づくエンティティー・リスト(EL)にも自動的に掲載される。これに伴い、当該事業体などが輸出などの取引の当事者となる場合、EARに基づく輸出許可申請の対象となる。その際、許可例外は適用されず、許可申請の審査は、原則不許可の方針に基づいて行われる。

今回の最終規則の対象となるOFAC管理の14の制裁プログラムは次のとおり。

  • ロシアによる2014年のクリミア併合と2022年からのウクライナへの侵略、ベラルーシの民主的なプロセスや制度の弱体化などに関連する7つの大統領令(13405号、13660号、13661号、13662号、13685号、14024号、14038号)に基づくプログラム
  • テロに関連する2つのプログラム(外国テロ組織制裁規則、グローバルテロ制裁規則)
  • 大量破壊兵器拡散者制裁規則、麻薬不法取引とそのほかの犯罪ネットワークに関連する4つのプログラム(大統領令13581号、14059号、麻薬不法取引制裁規則、外国麻薬キングピン制裁規則)

今回の最終規則に関して、BISは、金融取引を主な対象とするOFACの規制を補完できると、その意義を述べている。

米政府は昨今、輸出管理を安全保障上重要な措置と位置付け、執行強化に注力しており(2024年1月18日記事2024年2月15日記事参照)、3月に発表した2025年度(2024年10月~2025年9月)の予算教書では、BISの予算拡充を求めている(2024年3月13日記事参照)。

(注)米国人には、米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人が含まれる。また、SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も制裁の対象となる。

(赤平大寿)

(米国)

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