中銀、為替の並行市場を排除、農産品など値下がり

エジプト中央銀行（CBE）は3月6日、インフレ抑制のため政策金利を6ポイント引き上げると同時に、為替相場をあらためて自由化すると発表し、実質的に通貨を切り下げた（2024年3月12日記事参照）。この発表では、外貨不足が公定レートに比して著しくドル高、エジプト・ポンド（EGP）安の並行市場を生み、結果として輸入品が高騰、インフレを引き起こしてきたと明記した。この認識に基づき、並行市場を排除することで、これまで滞っていた輸入代金決済が進み、インフレを抑制できるとした。

為替自由化を発表した直後、公定レートが1ドル31EGPから1ドル50EGP前後に切り下がった（EGP安・ドル高）。アラブ首長国連邦（UAE）とエジプト政府が2月23日に調印した350億ドルという過去最大の対内投資案件（2024年2月27日記事参照）が好材料となり、3月3日に1ドル42EGP前後までドル高が進んでいた並行市場は、公定レートとほぼ同じ額までEGP高・ドル安が進んだ。2週間ほど経った時点でも公定レート、並行市場とも、1ドル47～48EGPに収束しており、CBEの目指す並行市場の排除に成功している。ロシアのウクライナ侵攻に端を発した輸入品価格高騰による外貨不足以来、多くの進出日系企業で原材料・部品の輸入決済が滞り、エジプト日本商工会、ジェトロが大使館と協力してCBEに改善を申し入れるなどの活動をしてきた。ここにきて通貨の切り下げによる為替差損が大きいものの、ようやく外貨両替が可能となり、輸入決済・外貨送金が進んでいる。

農産品市場では多くの品目が値下がり始めた。3月4日付の「アル・アラビーヤ」によると、飼料用トウモロコシが年初のトン当たり2万1,000EGPから、直近では1万3,000EGPに、大豆は4万6,000EGPから3万1,000EGPに値下がりした。小麦は、並行市場でEGP高・ドル安が進んだ効果で、トン当たり1万6,500EGPから1万4,500EGPに値下がりした。小麦加工品の小麦粉にはまだ値下げ効果が現れていない。大麦は2月の2万1,000EGPから1万7,500EGPに値下がりした。

輸入豆は1週間でトン当たり4万2,000EGPから3万4,000EGPに下がった。

植物油は数日でトン当たり約1万ポンド下がった結果、精製オレイン油がトン当たり7万EGP、コーン油が6万5,000EGP、ヒマワリ油が6万2,000EGP、大豆油が5万9,000EGPまで値下がりした。

（西澤成世）