日本企業14社、メキシコのホタテ加工拠点候補を視察、バイヤーニーズを確認
(米国、メキシコ)
海外展開支援部中堅中小企業課
2024年03月28日
ホタテ加工業者や商社など日本企業14社は3月14~16日、米国市場に近接するメキシコで、実証用に輸入された日本産ホタテの殻むきの工程や、玉冷(注1)加工を視察した。さらに、米国バイヤーを対象に上記施設で加工されたホタテの試食会とネットワーキングにも参加した。視察団一向はおおむねメキシコでの工程を高く評価し、米国バイヤーによるメキシコ加工ホタテに対する関心の高さを確認した。今回の視察団は2023年8月25日に発表された中国による日本産水産物の輸入禁止措置へ対応するために組織された。中国は日本産ホタテの加工拠点でもあるため、中国の輸入禁止措置に伴って代替加工地の確保が急務となっていた。視察団はジェトロが農林水産省、経済産業省などの協力の下に派遣したもので、1月のベトナムに続く第2弾となる。
メキシコでの加工は、同国バハカリフォルニア州エンセナダ市(注2)の3カ所が視察対象となった。同施設は2月から、ジェトロと日本のホタテ取扱企業が協力し、メキシコに初輸入された日本産冷凍両貝ホタテを用いて、殻むきのトレーニングを事前に行った上で、視察団を受け入れた。3社ともホタテの取り扱いは初めてながら、米国向けに輸出する水産物の取り扱い実績は豊富にあり、今回の視察に向けホタテの殻むき技術を向上させてきた。(2024年2月26日記事参照)
視察団は1日目に米国ロサンゼルス市で結団式とブリーフィング実施後、2日目には陸路でロサンゼルス市からエンセナダ市へ移動した。ミッションに参加した日本企業からは、「ホタテの消費地のロサンゼルスと、加工地となるエンセナダの近さを実感することができた」との声が上がった。午後はバハカリフォルニア州政府機関の参加を得て、セミナーと現地バイヤーとのネットワーキングを実施した。参加者は、現地の投資環境について理解を深めるとともに、バイヤーへ日本産ホタテをアピールした。参加者からは「このミッションを契機に、メキシコがホタテの代替加工地のみならず、消費地としても可能性を持つことがわかった」との意見があった。
3日目は3カ所の水産品加工施設を訪問、参加企業は実証用に輸入した日本産ホタテの殻むきの工程や、玉冷加工の様子、他の貝やカキなどの加工の様子を確認した。日本企業からは「取引を検討する上で十分な設備やキャパシティーを有していた。今後の取引について協議を進めたい」という声や、「社長自ら工員を指導している姿を見て、安心して良い製品を生産できるのではないかと感じた」との期待が寄せられた。一方で「まだホタテ加工は始めたばかりで、日本の技術者の指導による加工員のスキル向上が必要と感じる」との声もあった。
視察団一行はこの後、ロサンゼルスに戻り、米国バイヤーとのネットワーキングに参加した。会場では、前日に視察企業で加工したホタテを実際に冷蔵でロサンゼルスに陸路輸送し、米国人に合う6種類の味付けを施してバイヤーへ試食提供した。バイヤーからは日本産ホタテの甘みの強さに感嘆する声とともに、メキシコでの加工について関心が示された。
同ホタテは、3月18日~20日にラスベガスで実施されたBar and Restaurant Expoにも出展され、バイヤーからは「どこで買えるのか」など、メキシコで加工された日本産ホタテの味に高い評価・関心が得られている。
(注1)刺し身用に開発された貝柱だけの商品。
(注2)今回視察を行ったメキシコ・バハカリフォルニア州エンセナダ市は太平洋側に位置し、米国カリフォルニア州の国境までは陸送で2時間以内に到着する。そのため、マグロやカキなどは水揚げされてから冷蔵のままトラック輸送され、24時間以内にロサンゼルスやラスベガスなど米国の大消費地のレストランに並ぶため、商品の鮮度面で高い優位性を持つ。再冷凍を施さない生食用冷蔵貝柱や、無加水の貝柱(再冷凍)といった、現在アジアで加工され米国に流通している日本産ホタテ商品と比較して、新たな付加価値を持つ商品展開の可能性がある。
(松下美咲)
(米国、メキシコ)
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