欧州委、域内の人材や技能不足の解消に向けた行動計画発表
(EU)
ブリュッセル発
2024年03月28日
欧州委員会は3月20日、域内の人手不足や労働者の技能不足の解消に向けた行動計画に関する政策文書を発表した(プレスリリース)。これらは全加盟国が直面する課題で、状況は年々悪化している。有効な対策を取らない場合、EUの競争力や経済成長のほか、社会福祉の財源などに悪影響を及ぼすと指摘されており、産業界からも対策を求める声が出ている(2024年3月28日記事参照)。背景には、社会の高齢化や、グリーン・デジタル分野の進展に伴う技能ニーズの変化がある。労働環境が悪い一部の職種や分野でも、人材の維持や確保が困難になっている。そこで、欧州委は加盟国や経済団体、労働者団体などとともに実施すべき政策として行動計画を策定した。主な内容は次のとおり。
〇女性、熟練度の低い労働者、高齢者など労働市場で十分に活用されていない層の活用:欧州委は、長期失業者向けやニート向け事業に出資する。また、女性など一部の労働者がパートタイム雇用にならざるを得ない原因や、加盟国ごとの病気休暇制度と、当該制度が労働者の健康や生産性に与える影響を調査する。さらに、高齢者の労働市場への参加を支援すべく、柔軟な定年や年金収入と給料の組み合わせを可能にする年金改革の影響も評価する。加盟国に対しては、課税対象を労働に対する所得税から他の収入源に移行することを念頭に、低所得者向けの所得税率低減などの税制改革や、就業可能者を段階的に労働市場に戻すための支援などを盛り込んだ社会保障改革を検討することを求める。
〇技能習得や教育支援の提供:欧州委は、技能向上やリスキリング(新たな技能の習得)に向けた分野別や地域別のパートナーシップを推進するとともに、2027年までに最低100カ所の職業訓練センターに共同出資する。加盟国に対しては、労働市場分析を行った上で、包括的な技能戦略や需要の高い技能の習得強化に向けたカリキュラムを策定することを求める。
〇EU域外からの人材確保:欧州委は、人材を募集する域内の雇用主と域外国の求職者のマッチング支援策「EU人材プール」規則案(2023年11月21日記事参照)が正式に採択され次第、速やかにEU人材プールを設置する。
このほかに、行動計画には、労働環境の改善や域内での労働者や学生の流動性向上に向けた施策も盛り込まれている。
(吉沼啓介)
(EU)
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