自動車業界団体、新車のCO2排出量上限値基準案の導入支持も、内容再検討求める

(オーストラリア)

シドニー発

2024年03月22日

オーストラリアの連邦自動車産業会議所(FCAI)は3月6日、連邦政府が導入を検討している新車効率性基準(New Vehicle Efficiency Standard:NVES)案に対し意見書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを提出したと発表した。連邦政府はNVES案のパブリックコメントを3月4日まで実施していた(2024年2月20日記事参照)。

FCAIは、NVESの導入について強く支持をすると表明した。一方で、政府のNVES案の内容については、排出量上限値の目標設定が現実的でなく達成不可能であること、罰則が厳しすぎること、2025年1月をNVESの開始時期とすることは自動車メーカーにとって規制への対応準備に必要な時間が確保できないと主張した。連邦政府が進めようとしているオプションB案(注1)に反対の姿勢を示し、FCAIが推奨する代替案を提示した。メーカーは商業的に大きな痛手を負い、一部のモデルのオーストラリア市場への投入を見合わせる可能性があるほか、消費者から見ても車種の選択肢が狭まり、小売価格が上昇する可能性があることをその理由に挙げた。以上のことから、政府に対し、NVESの開始時期、設計などを再検討するよう求め、FCAIは引き続き政府と議論していく準備はできているとした。

政府試算、低排出車購入者は年間平均1,000豪ドル節約可能に

オーストラリア連邦政府のクリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相は、民間放送局のチャンネル9のインタビュー番組(3月11日)で、NVES導入により低排出車の購入者は燃料費削減により年間約1,000オーストラリア・ドル(約9万7,000円、豪ドル、1豪ドル=約97円)を節約できるとの試算を示した。また、現代自動車、起亜、ボルボ、フォルクスワーゲン、日産などがNVES導入をはじめとした政府案の支持を表明したと述べた(注2)。

(注1)コンサルテーションペーパーでは、NVESを導入しない場合(ベースライン)に加えて、幾つかの条件(車種別・年別のCO2排出上限値、クレジットの取り扱い、対象車種、ペナルティーの金額など)に応じた3種類の案(オプションA案、B案、C案)を示している。オプションAは上限値を毎年段階的に緩やかに下げていく案、オプションCは上限値を毎年段階的に大幅に下げていく案。連邦政府が推奨しているのは、その間を取ったオプションB案。

(注2)FCAIデータによると、トヨタは2023年のオーストラリアの新車販売台数に占める割合が約2割と、メーカー別で最もシェアが大きい。

(青島春枝)

(オーストラリア)

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