気候変動関連報告の義務化で、大企業向けに補助金

(シンガポール)

シンガポール発

2024年03月22日

シンガポール貿易産業省(MTI)管轄下の経済開発庁(EDB)と企業庁(エンタープライズシンガポール)は3月1日、大企業を対象に気候変動関連報告の作成コストを支援する「持続可能性報告補助金」の導入を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。2025会計年度(注)から、全ての上場企業に対して気候変動関連の情報開示を義務付けるのを受けての措置だ。

同補助金は、年間売り上げが1億シンガポール・ドル(約111億円、Sドル、1Sドル=約111円)以上の大企業が、気候変動関連報告を初めて作成する際のコストを一部支援するもの。補助額は、報告作成に生じる適格支出の最大30%、または15万Sドルのいずれか低い額となる。補助の対象となる報告書は、国際サステナビリティー基準審議会(ISSB)の基準に基づいて作成する必要がある。

また、企業庁は、中小企業の気候変動関連報告作成を支援するため、認定環境関連サービス会社と提携して、報告書作成のプログラムを2024年後半に開始する予定だ。同プログラムの提供期間は3年間で、同プログラムに初年度に参加した中小企業に対しては参加費用の70%を支援。2年目からは50%を支援する。

2027会計年度から非上場大手企業にも、気候変動関連報告の義務対象を拡大

気候変動関連の情報開示については、会計企業規制庁(ACRA)とシンガポール取引所(SGX)の子会社SGXレギュレーションが2023年7月に一般からの意見公募を開始し、同年9月末に締め切っていた(2023年7月11日記事参照)。チー・ホンタット第2財務相は2024年2月28日、同公募での意見を考慮した結果、2025会計年度から全ての上場企業に対して、ISSBの基準に基づく気候変動関連の情報開示を義務付けると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。また、2027会計年度から、年間売り上げが10億Sドル以上で、総資産が5億Sドル以上の非上場の大手企業に対し、気候変動関連の情報開示を義務付ける。さらに、情報を開示した上場企業と非上場の大手企業について、開示2年後に、「スコープ1(自社が排出した温室効果ガス)」と「スコープ2(他社から供給の電気、熱・蒸気を使用したことに伴う間接的な温室効果ガスの排出)」について、認定外部機関による保証を義務付ける予定だ。

チー第2財務相によると、会計企業規制庁は、気候変動関連の情報開示の義務の対象を非上場の中小企業にも拡大するかについて2027年に検討を行うとしている。

(注)2025年1~12月。

(本田智津絵)

(シンガポール)

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