チン首相立ち会いで30件の文書交換、日越経済フォーラム

(ベトナム、日本)

調査部アジア大洋州課

2023年12月28日

ベトナム計画投資省と在日ベトナム大使館、ジェトロは12月16日、「日越経済フォーラム」を東京都内で開催した。ファム・ミン・チン首相による就任後3度目の訪日を記念したイベントで、チン首相、齋藤健経済産業相、石黒憲彦ジェトロ理事長らが出席した。フォーラムでは、チン首相の立ち会いの下、30件の日越投資案件披露セレモニーが行われた(添付資料表参照)。また、フォーラムには、約600人の両国の政府、企業関係者らが参加した。

チン首相は「世界経済にはさまざまなリスクがあるが、ベトナムは国際関係も良好で、足元の経済情勢も安定してきていることから、他国と比較して投資リスクが少ないことが強みだ。特にデジタルトランスフォーメーション(DX)、グリーントランスフォーメーション(GX)の推進には日本の協力が不可欠で、積極的な投資を望む」「日本には、ベトナム人材の国際基準レベルまでの育成を期待している」と述べた。

写真 登壇するチン首相(ジェトロ撮影)

登壇するチン首相(ジェトロ撮影)

来賓のあいさつで齋藤経産相は「ベトナムはわが国にとってまさに信頼できる包括的で戦略的なパートナー」と述べた。また、主に(1)未来産業の創出、(2)脱炭素化の推進、(3)人材育成の3分野での協力を通じて、ベトナムの2045年の先進国入りや、2050年のカーボンニュートラル達成に貢献していきたいと発言した。

また、「日越注目企業によるベトナム投資の新潮流~高付加価値化に向けて」というテーマで、ベトナム進出日系企業が登壇した。発電事業者のJERAの矢島聡常務執行役員は「2050年のカーボンニュートラル達成に向けて、再エネの導入だけでなく、電力の安定供給への配慮も極めて重要になる。10月にはベトナム電力総公社(EVN)と脱炭素ロードマップ策定に向けて協業する覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを締結しており、ベトナム特有の事情などにも鑑みて、脱炭素化に貢献したい」と述べた。金属部品の切削加工を手掛ける山本金属製作所の山本憲吾代表取締役社長は「ベトナム国内の裾野産業は総じて、機械加工のノウハウが不足しており、生産性改善の余地がある。AI(人工知能)システム、IoT(モノのインターネット)・DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを通じて、生産性の高い製造業の実現と、高度なエンジニアの育成に貢献したい」と述べた。

ジェトロ・ハノイ事務所の中島丈雄所長は「DXやGXは日本企業が強みを持つ分野で、ここに新時代の日越協力が生まれる」と述べ、各分野での日越協業の事例を紹介した。

なお、日本とベトナムの2国間の関係は先日、「アジアと世界における平和と繁栄のための包括的戦略的パートナーシップ」に格上げされた(2023年12月7日記事参照)。

写真 チン首相立ち会いの下行われた日越投資案件披露セレモニー(ジェトロ撮影)

チン首相立ち会いの下行われた日越投資案件披露セレモニー(ジェトロ撮影)

(細川雄貴)

(ベトナム、日本)

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