メルコスール・シンガポールFTAが署名

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、シンガポール)

調査部米州課

2023年12月13日

ブラジル外務省および開発商工サービス省は12月7日、第33回メルコスール首脳会議で、メルコスール・シンガポール自由貿易協定(FTA)が署名されたと発表した。同FTAは2022年7月20日に政治合意に至っていた(2022年7月21日記事参照)。メルコスールにとって、アジアの国との初のFTA締結となった。ブラジルのジェラルド・アルキミン副大統領兼開発商工サービス相は「アジア、特にASEANへの玄関口として戦略的な位置にある」と、シンガポールを通じたアジア市場へのアクセスに期待を寄せた。

メルコスール事務局の貿易統計によると、2022年のメルコスール4カ国からシンガポールへの輸出額は85億6,800万ドル、輸入額は14億8,600万ドルとなっている。2009年以降はメルコスールの貿易黒字で推移している(添付資料図参照)。シンガポールへの輸出品目は石油や原油が8割以上を占めているが、豚肉、牛肉、鶏肉などの農産品も輸出している(添付資料表1参照)。輸入品目では石油、殺虫剤、プロセッサー、医薬品、電子部品類などがある(添付資料表2参照)。

物品貿易について、シンガポール側はメルコスールから輸入する全ての品目に関して、FTA発効とともに関税を即時撤廃する。一方、メルコスール側はシンガポールからの輸入品の95.8%(品目ベース)に対して、発効から最長15年かけて関税を撤廃する(別添表参照)。関税が即時撤廃されるのは品目ベースで25.6%となる。完成車や自動車部品、電子機器、医療機器など、メルコスール側にとってセンシティビティの高い品目433品目(4.2%)は、メルコスール側の輸入関税撤廃の例外品目となっている(例外品目の詳細は添付の譲許表を参照)。

また同FTAは、「税関手続きおよび貿易円滑化」「投資」「政府調達」「中小零細企業」「電子商取引」など19の章で構成されている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

税関手続きおよび貿易円滑化の章(第4章)では、輸出入、通関手続きに関連する手続きの透明性、効率性、簡素化を図るため、IT技術の一層の使用を促す。

電子商取引の章(第12章)では、電子認証、オンライン消費者保護、スパムへの対応、ペーパーレス取引の促進、電子請求書発行、サイバーセキュリティーに関する協力などが含まれている。また、国境を越えたデータフローやデジタル経済への中小企業の参加促進などについても言及されている。

知的財産の章(第15章)では、アルゼンチン産ワイン、ブラジル産チーズなどメルコスール全体で235品目が地理的表示(GI)の保護を受けることが規定されている。アジアの国では初めて、ブラジル産コーヒーがGIのリストに掲載された。

(小西健友)

(アルゼンチン、ブラジル、パラグアイ、ウルグアイ、メルコスール、シンガポール)

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