伊藤忠商事、ハイブとグリーンアンモニア分野の協力覚書締結
(南アフリカ共和国)
ヨハネスブルク発
2023年12月22日
南アフリカ共和国のデェベハ(Gqeberha、旧ポート・エリザベス)で12月8日、伊藤忠商事とハイブハイドロジェン南アフリカは、グリーンアンモニア製造事業の協業に関する協力覚書(MOC)締結式を開いた。式典には牛尾滋・駐南ア大使が出席して祝辞を述べた。ハイブは再生可能エネルギー発電プロジェクトのデベロッパーの英国のハイブエナジーと南アのビルトアフリカによる合弁会社で、2019年に南アで設立された。
両社は今後、東ケープ州ネルソン・マンデラ・ベイにあるクーハ特別経済特区(Coega IDZ)内にグリーンアンモニアの製造・輸出拠点を建設し、2028年下半期に操業を開始する予定だ。投資総額は200億ドルを超えると予想され、第1段階では360万キロワット(kW)の再生可能エネルギーを利用し、年間約90万トンのグリーンアンモニアを生産する。アンモニアは低コストで効率よく輸送・貯蔵できる水素キャリア(注)で、将来的には欧州、日本、韓国市場への輸出を想定する。
ジェトロがハイブのコリン・ルーバー氏にインタビューしたところ(取材日:12月8日)、「ハイブはデェベハでの建設を決めるまでに52以上の港を調査し、今回の場所が最も開発と輸出に適した場所と判断した。この地は太陽光・風力発電に適した自然エネルギーが豊かな土地で、送電線網があり、現在はほぼ稼働していないマンガン輸出用に開発された設備を再利用できる。そのほか、州政府や市のサポート、教育を受けた人材へのアクセスの容易さ、市内のインフラや教育機関が比較的安定しているため、社員や家族が安心して居住できるのも決め手の1つ」と語った。
南ア政府は脱炭素社会、水素産業の構築を目指し、水素に関わる研究開発への支援や外資誘致を積極的に行っている。国家戦略の変遷をみると、まず2007年に「国家ハイドロジェン南アフリカ(HySA)RDI戦略)」を策定した。2022年に「水素社会ロードマップ」を発表(2022年2月28日記事参照)し、2023年10月には「グリーン水素商業化戦略(The Green Hydrogen Commercialisation Strategy: GHCS)」を承諾している。また、2023年9月には、日本の経済産業省と南アの科学技術イノベーション省は水素とアンモニアに関する連携強化のため、MOCを締結した。
(注)水素を別の状態や材料に変換して貯蔵・運搬する技術
(堀内千浪)
(南アフリカ共和国)
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