EU、廃棄物輸送規則改正案で政治合意、OECD非加盟国へのプラスチック廃棄物輸出を禁止

(EU)

ブリュッセル発

2023年11月21日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は11月17日、EU域内外での廃棄物輸送による汚染防止を目的とした廃棄物輸送規則の改正案に関して、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同改正案は、欧州委員会が欧州グリーン・ディールの一環として2021年11月に提案したもの(2021年11月19日記事参照)。今回の合意では、域内外での汚染防止に加え、循環型経済の促進を法案の目的に新たに追加。域外への廃棄物輸出規制を強化すると同時に、廃棄物の二次資源としての利用を円滑にするため、域内輸送の手続きを簡略化する。同改正案は今後、EU理事会と欧州議会での正式な採択を経て施行される見込み。なお、現時点では合意された法文は公開されていない。

まず今回の合意では、廃棄目的でのあらゆる廃棄物の域外国への輸出と、二次資源利用を目的とした場合であっても、有害廃棄物に関しては域外国のうちOECD非加盟国への輸出を、引き続き禁止することが確認された。その上で、域外国へのプラスチック廃棄物を対象にした輸出規制を強化。OECD非加盟国への有害でないプラスチック廃棄物の輸出を、同改正案の施行の2年半後から原則として禁止する。ただし、OECD非加盟国が、有害でないプラスチック廃棄物のEUからの輸入を希望する場合、施行から5年後以降に、当該国が厳格な廃棄物管理基準などを満たした上で、欧州委から輸出禁止の解除を受けることで、EUから当該国への輸出が例外的に認められる。

他方でOECD加盟国へは、「有害化学物質などの事前のかつ情報に基づく同意の手続き(PIC)」を利用することで、有害でないプラスチック廃棄物の輸出が認められる。欧州委は、OECD加盟国へのプラスチック廃棄物の輸出に関するモニタリングを実施し、輸出先において環境上の問題を発生させる場合には、規制をかけることができる。さらに、域外国に廃棄物を輸出するEU域内の事業者は、輸出先の受け入れ施設において廃棄物が適切に処理されているかに関して、独立した監査を実施する必要がある。

域内の他の加盟国への廃棄物の輸送に関しては、廃棄目的の場合、原則として禁止する。二次資源利用を目的とする場合は、厳格な要件を満たし、PICを利用することで認められる。また、手続きの簡略化策については、手続きのデジタル化やファストトラック手続きなどを利用することで、域内輸送をより容易に実施することが可能となる。

このほか、今回の合意では、廃棄物の違法な輸送に対してより厳格に対処すべく、加盟国に対して、同改正案に違反した場合の罰金や、輸出承認の取り消しなどを含む罰則を規定することや、改正案のより効果的な実施に向けた加盟国間での協力メカニズムなどを設置することを求めている。

(吉沼啓介)

(EU)

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