解散総選挙で中道左派政党が勝利、組閣を受任

(スロバキア)

プラハ発

2023年10月04日

スロバキアで議会の解散総選挙(一院制、150議席、任期4年)が9月30日に行われ、ロベルト・フィツォ元首相率いる中道左派の「方向党-社会民主主義(Smer-SD)」が2020年の前回総選挙(2020年3月5日記事参照)より4議席増の42議席を獲得し、第1党となった(添付資料表参照)。前回選挙で議席が獲得できなかったものの、リベラル政党として選挙前の世論調査で高い支持を得ていた「プログレッシブ・スロバキア(PS)」が32議席を得て第2党に躍進した。また、Smer-SD政権下でフィツォ氏に代わって首相を務めた経験を持つペテル・ペレグリニ氏が立ち上げた中道左派の「声―社会民主主義(Hlas-SD)」が27議席を獲得した。

今回の選挙は、前回の選挙で成立した「普通の人々・独立した人達(OĽaNO)」「われわれは家族(Sme rodina)」「人々のために(Za Ľudí)」「自由と連帯(SaS)」の4党連立の中道右派政権が、2022年9月のSaSの離脱により少数内閣となったことを受けて、2022年12月15日に議会が内閣不信任を可決したことから実施された。

前政権の連立与党のうち、OĽaNo、Za Ľudí、および政権を離脱したSaSは議席を獲得したが、Sme rodinaは議席を失った。また、極右の「共和国(Republika)」も議席の獲得に至らなかった。

今回の選挙は、ウクライナへの軍事支援停止や国家利益を重視したEU移民政策を提言するなど、ナショナリズム色の強いSmer-SDと、これに対抗する、欧州議会副議長を務めるミハル・シメチカ党首率いる親EU勢力PSの争いとして注目された。投票率は前回総選挙の65.8%を上回り、議会選挙投票率としては2006年総選挙以降最高の68.5%を記録した。

ズザナ・チャプトバー大統領は10月2日、第1党となったSmer-SDのフィツォ党首に組閣を委任した。

スロバキアの情勢を伝えている10月1日付のチェコ通信によると、チェコ国内の政治学者はフィツォ氏について、他党との連立を余儀なくされるため、より現実的な外交政策を掲げるとみている。カレル大学社会科学部のヨゼフ・ムレイネク氏は「スロバキアが(外交の)方向性を完全に変えるとは思えない」と述べた。

また、スロバキア経済への影響に関してチェコ通信が10月2日に実施した聞き取り調査の結果、チェコの経済アナリストは一様に、社会民主主義政策の推進によって社会保障分野での歳出増加が財政悪化をもたらすことや、企業・高所得者の財政負担増などを懸念していることが明らかになった。

(中川圭子)

(スロバキア)

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