米財務省、対ミャンマー制裁を拡大、ジェット燃料部門の外国人なども対象に
(米国、ミャンマー、シンガポール)
ニューヨーク発
2023年08月24日
米国財務省は8月23日、ミャンマーに対する制裁を拡大し、同国経済のジェット燃料部門で活動する外国の個人または事業体にも制裁を科せるようにしたと発表した。これに伴い、ミャンマーの軍事政権向けのジェット燃料の調達と流通に関与している個人と事業体を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。
制裁対象のジェット燃料部門への拡大は、対ミャンマー制裁に関する2021年2月の大統領令(2021年2月12日記事参照)に基づく措置(注1)。今回の措置は、ミャンマーの軍事政権が同国民に対し、「暴力的な空爆」を行っていることを受けて決定した。財務省は、軍事政権が2023年4月と6月に行った直近の空爆で、最大90人の市民が犠牲になったとしている。財務省は3月、ミャンマーの軍事政権向けのジェット燃料の供給に関わる制裁リスクについて、企業などに注意喚起を促す勧告を発表していた。
今回SDNに指定されたのは、いずれもシンガポールに本拠を置くシューン・エナジー、PEIA、P.E.Iエナジーの3社と、それら3社を所有・支配する個人を含むミャンマー国籍の2人。SDNに指定された場合、在米資産の凍結や、米国人(注2)との資金・物品・サービスの取引禁止が科される(注3)。
ブライアン・ネルソン財務次官(テロ・金融情報担当)はプレスリリースで、「軍事政権にとって重要な部門に追加的に制裁権限を拡大することにより、軍事政権が市民を抑圧するための資源をさらに奪うことができる」と指摘した。
2021年2月以降、米国がミャンマーに発動した主な制裁は添付資料を参照。
(注1)制裁対象のジェット燃料部門への拡大に関し、財務省はよくある質問(FAQ)を公開している。
(注2)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(注3)SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。ただし、財務省が発行し、現在も効力を有する一般許可(General License)に該当する取引・活動は、それらが指定する要件の下で認められる。一般許可の内容は財務省のミャンマー制裁のページ内のGENERAL LICENSESの項目を参照。
(甲斐野裕之)
(米国、ミャンマー、シンガポール)
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