欧州委、企業持続可能性報告指令(CSRD)に基づく欧州持続可能性報告基準(ESRS)委任規則案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年08月03日

欧州委員会は7月31日、企業持続可能性報告指令(CSRD、2022年12月1日記事参照)に基づく欧州持続可能性報告基準(ESRS)に関する委任規則案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(欧州委によるQ&A外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。CSRDは、大企業と上場した中小企業に対し、環境権、社会権、人権、ガバナンス要因などの持続可能性事項に関する報告を義務付けるもので、2023年1月5日に施行されている。今回発表されたのは、2024会計年度からCSRDの一部適用が開始される大企業が持続可能性事項を報告する際に利用することが求められるESRSを規定した委任規則案だ。委任規則案は8月後半にEU理事会(閣僚理事会)と欧州議会に送られた後、最長4カ月の審議期間にいずれかの機関が否決しない限り成立し、2024年1月1日から適用が開始される予定だ。

CSRDは報告義務の対象企業に対して、持続可能性の関連事項が企業に与える影響だけでなく、企業が持続可能性の関連事項に与える影響についても報告することを求めている。委任規則案の付属書1PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)には、セクターにかかわらず適用される持続可能性の関連事項に関する12基準(添付資料表参照)が規定されている。

ESRS 1(全般的要求事項)は、特定の開示要件を規定するものでなく、ESRSに基づく報告の際に適用される一般原則を規定する。ESRS 2(全般的開示事項)は、持続可能性事項にかかわらず開示が求められる必須事項を規定する。CSRDの報告義務の対象企業は、ESRS 2に基づく開示が義務けられるが、それ以外の基準に関しては、マテリアリティー分析(注1)の結果に応じ、自社のビジネスモデルや企業活動に関連のある情報のみを所定の基準に従って開示すればよい。ただし、マテリアリティー分析の実施は義務付けられており、分析には外部保証を得ることが求められる。気候変動に関しては、経済への影響が広範囲に及ぶことから、マテリアリティー分析の結果、関連しないと判断した場合でも、その判断に関する詳細な説明の提示が義務付けられる。

このほか、欧州委は、ESRSは国際的な持続可能性に関する開示基準のGRI(Global Reporting Initiative)スタンダードや、国際会計基準(IFRS)財団による国際サステナビリティー基準審議会(ISSB)の基準と高い水準での調整がされており、特に気候変動に関しては、ESRSに基づいて開示すべき情報は、ISSB基準に基づく開示すべき情報と大部分で一致するとしている(注2)。

なお、欧州委は今後、CSRDに基づき報告義務の対象となる上場している中小企業向けのほか、セクター別やEU域外企業向けのESRSに関する委任規則案についても別途策定する予定だ。

(注1)マテリアリティーとは、持続可能な成長のために企業が対応すべき重要課題。自社の競争優位性などに応じて個々の企業が特定する。

(注2)GRIやISSBについては、ジェトロ世界貿易投資報告 2023年版第IV章 第1節  持続可能な社会に向け進展するルール形成と主要国・地域の政策PDFファイル(2.1MB)も参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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