在ロシア日系企業の景況感、4期連続でマイナス、対ロ制裁が悪影響

(ロシア、日本)

調査部欧州課

2023年07月03日

ジェトロがロシア進出日系企業を対象に5~6月に実施したアンケート調査によると、在ロシア日系企業の景況感は依然としてマイナスが続いている。ウクライナへの軍事侵攻をきっかけにリーマン・ショック後並みに落ち込んだ2022年5月からは回復傾向にあるが、西側諸国や日本による対ロ制裁などの影響によって製品・材料の輸入や販売・出荷が困難になり、収益が減少している状況が続く。また、ロシアによるウクライナ侵攻が長期化する昨今の情勢から、先行きの不透明感を不安視する声も聞かれた。

自社の景況DI(注)の最近の状況はマイナス56で、軍事侵攻後に最も落ち込んだ2022年5月(2022年5月25日記事参照)を底に、やや回復するものの、引き続きマイナスとなった(添付資料図1参照)。企業からは、「輸出管理規制により貨物の移動が制限され、契約履行ができない可能性が出てきている」など、日本や西側諸国による制裁の影響を指摘する声が多かった。景況見通しDIの2カ月後の状況は、前回の1月調査と比べて7ポイント減のマイナス56。「事業再開のめどは立っていない」(「悪い」と回答した企業)など、先行きの不透明感を懸念する声が上がった。

製品・サービスの自社販売価格DIは20で、前回より8ポイント減(添付資料図2参照)。販売停止により現状を評価できず、「不明・該当せず」と回答した企業が最も多かった。製品在庫DIは前回比9ポイント減の50。「不足」と回答した企業からは、サービスを継続する事業では徐々に部品が品薄になりつつあるという声が上がり、厳しい状況が明らかになった。

資金繰りDIは前回比2ポイント減少のマイナス32。「日本からの送金時の確認が厳しくなり、タイムリーな送金ができなくなっている」(「不変」と回答した企業)という声や、「若干あった販売による収入がほぼなくなり、手持ち資金の切り崩しで運営」(「悪い」と回答した企業)とのコメントもあった。

今回の調査は5月31~6月7日、モスクワ・ジャパンクラブ加盟企業と一部の在サンクトペテルブルク日系企業157社を対象にアンケート調査を実施。68社から有効回答を得た。日系企業の現在の事業ステータス、今後の事業見通し、駐在員・現地従業員数の増減などについては2023年7月3日記事を参照。

(注)景気動向指数:ディフュージョン・インデックス(Diffusion Index)の略。景況感DIは、「良い」と回答した企業の比率から「悪い」とした比率を引いた数値。製品・サービスの自社販売価格DIは、「上昇」から「下降」の比率を引いた数値、製品在庫DIは、「不足」から「過大」の比率を引いた数値、資金繰りDIは、「改善」から「悪化」の比率を引いた数値。

(後藤大輝)

(ロシア、日本)

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