EU、デジタル化やオンライン販売に対応した改正一般製品安全規則が施行
(EU)
ブリュッセル発
2023年06月19日
EUでは6月12日、一般製品安全指令を約20年ぶりに改正する一般製品安全規則が施行された(プレスリリース)。今回の改正は、従来の枠組みを維持しつつ、デジタル化やオンライン・マーケットプレースの普及などの社会変化に対応することで、より高いレベルでの消費者保護を目指すものだ。欧州委員会は、2013年にも一般製品安全指令の改正案を発表したものの加盟国間で合意に至らず、2021年に再度、新たな改正案(2021年7月7日記事参照)を発表していた。本規則は、2024年12月13日から適用を開始する。
一般製品安全規則は、製造事業者、認定代理人、輸入事業者、販売事業者などの事業者に対して「安全な製品」のみを域内市場に供給する義務を課す消費者保護規制だ。食品や医療関連など個別のEU安全規制の対象となっている製品を除き、EUの消費者向けあるいは消費者が利用し得る全製品が対象となる。主要な改正点は次のとおり。
- デジタル技術に関連した安全リスクに対応すべく、本規則の適用対象となる「製品」に、他の商品と相互接続したデジタル「商品」など、あらゆる「商品」が含まれること
- 安全な製品かを評価する際に、サイバーセキュリティーや人工知能(AI)などの観点も考慮すること
- 域内市場に製品を初めて供給することができるのは域内で設立された事業者のみであり、当該事業者は供給後も必要に応じて安全性に関する検査を実施する義務を負うこと
- トレーサビリティを強化すべく、域内市場に製品を初めて供給する事業者は名前や域内の問い合わせ先などを製品あるいはそのパッケージに明記すること
- ソフトウエアのアップデートなどを想定し、対象製品に実質的な修正を加える場合は、製造事業者として扱われ、責任を負うこと
- リコールの際は、域内市場に製品を供給する事業者およびオンライン・マーケットプレースを提供する事業者は、影響を受ける全ての消費者を特定し、直接連絡すること
- リコールの責任を負う事業者は、効果的な改善策として、修理、交換、返金のうち、少なくとも2つの選択肢を迅速に提供すること
オンライン・マーケットプレースを提供する事業者に対しては、2022年11月に施行されたデジタル・サービス法(注)により、危険な製品を含む違法なコンテンツに関する規制が大幅に強化されたが、本規則でも、危険製品の販売については、より効果的に対処するための要件を規定する。当該事業者は、危険な製品をウェブサイト上で積極的に特定する義務を負わないが、加盟国当局から危険な製品の削除命令を受けた場合、当該事業者は遅くとも2営業日以内に対応しなければならない。また、当該事業者は、オンライン・マーケットプレースの出品者が、販売する製品の製造事業者などの名前や問い合わせ先などを表示できるようウェブサイトを設計し、出品者が危険な製品などを頻繁に販売する場合には、一時的に利用停止にすることも求められる。
(注)調査レポート「EUのオンラインプラットフォーム政策の概要 EUデジタル政策の最新動向(第3回)」(2023年2月)を参照。
(吉沼啓介)
(EU)
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