21カ国の非居住者からの投資をエンジェル税対象外に

(インド)

アーメダバード発

2023年06月02日

インド財務省・中央直接税委員会(CBDT)は5月24日付で、新規企業(スタートアップ、SU)への投資に対するエンジェル税の課税対象を見直した。インド居住、非居住者の区別なく課税対象とする一方、日本を含む米国、英国など対象の21カ国PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)の非居住者による投資は課税対象外とすることなどを発表した。追ってCBDTは、非居住者からの投資に関する評価ガイドラインを公表する見込み。

エンジェル税は、2012年に導入された財政法第56条2項(VII B)に由来する。未上場のSUが株式の発行によって調達した資本が公正市場価値(FMV)を上回る場合、その超過分は該当会計年度の「その他の源泉からの所得」と見なされ、所得税が課税されるもの。今回、同税の対象外とされたのは、付属書に明記された21カ国の居住者で、かつインド証券取引委員会(SEBI)が規定する「カテゴリーI」の外国人ポートフォリオ投資家(FPI)として登録された投資家や、政府関連の投資家(中央銀行、政府系ファンド、国際機関、多国間機関など)、設立または法人化された国の規定が適応される銀行や保険業、寄付基金、外国法に基づく年金基金、ファンドなどが該当する。

今回の改正では、シンガポール、モーリシャス、アラブ首長国連邦(UAE)などが対象外となったことが注目され、資金の流れを明確にしたい政府の狙いがうかがえる。これら諸国からのSUへの投資は全体の50%超を占め、資金調達への悪影響も懸念される一方で、まだ利益が上がらないアーリーステージのSUに対する課税や罰則が負担となっている現状を改善するとの期待感もある。

非居住者による投資に対して課税を強化する一方で、強固な規制、ガバナンスを持つ21カ国からの投資流入増加を促進する今回の動きは、結果的に政府財政に有益だとして一定の評価を受けている。さらには、インド初の国際金融特区GIFTシティー(2022年7月11日付2022年7月20日付地域・分析レポート参照)への企業進出や、外国資金調達の拠点としての活用を促進したい政府の意図が感じられる、との指摘もある(「フィナンシャル・エクスプレス」紙、「インディアン・エクスプレス」紙5月28日)。

(古川毅彦)

(インド)

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