米サウスカロライナ州、妊娠6週目以降の人工妊娠中絶を原則禁止

(米国)

ニューヨーク発

2023年05月26日

米国サウスカロライナ州のヘンリー・マクマスター知事(共和党)は5月25日、胎児の心拍が確認された後の人工妊娠中絶を禁止する、通称「ハートビート法」に署名外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。一般に、胎児の心拍が確認されるのは妊娠6週目ごろとされる。これは妊娠初期に当たり、妊婦は妊娠に気付かない場合もあるが、同州内ではその場合でも原則、それ以降の人工妊娠中絶は認められなくなる。

例外として、妊婦の生死に関わる場合や致命的異常がある場合、強姦・近親相姦により妊娠した場合には、妊娠12週目まで人工妊娠中絶が認められる。なお、強姦・近親相姦により妊娠した場合は、警察への届け出と2人の医師による診察結果が必要となる。これについて、同州選出のナンシー・メイス連邦下院議員(共和党)は「被害者の女性にとってトラウマになる経験であり、警察への届け出や医師の診察結果を強制すべきではない」と反対を表明していた(CBSニュース5月19日)。さらに、同州上院議会の共和党女性議員3人は、民主党議員とともに、人工妊娠中絶を妊娠12週目まで認めるよう法案の修正をほかの共和党議員に働きかけていたが、結局は既述のとおり妊娠6週目までで成立となった(CBS5月23日)。

マクマスター知事は「署名によって法案は法律となり、ただちに胎児の命を救い始める。生命に関わる権利は守らなければならず、われわれはそのために全力を尽くす」とした(「Post and Courier」電子版5月25日)。

ハートビート法に違反して人工妊娠中絶手術を行った医師は、例外を除いて重罪となり、有罪判決を受けた場合、1万ドルの罰金、2年以下の懲役、またはその両方が科される。また、人工妊娠中絶目的で妊婦に薬物、医薬品、処方箋を提供、処方または投与する者も、例外を除いて重罪となり、有罪となった場合は2年以上5年以下の懲役または5,000ドル以下の罰金、またはその両方が科されるとしている。人工妊娠中絶薬については現在、人工妊娠中絶が合法化されている他州で利用されているが、2022年以降訴訟が続いている(2023年4月26日記事参照)。

米国では現在、14州で人工妊娠中絶がほぼ全面的に禁止されている。妊娠6週目以降において禁止している州は、ジョージア州、サウスカロライナ州の2州となった(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月25日)。

(吉田奈津絵)

(米国)

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