EU、乗用車・バンのCO2排出基準の新規則施行へ、電動化方針に変わりなし

(EU)

ブリュッセル発

2023年03月30日

EU理事会(閣僚理事会)は3月28日、欧州議会と2022年10月に暫定合意した乗用車・小型商用車(バン)の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案(2022年10月31日記事参照)を正式に採択した(理事会のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州議会は2月14日に同改正案を正式に採択していることから、EU官報掲載から20日後に発効する。

EU理事会は当初、同改正案を3月上旬に正式採択する見込みだったが、ドイツが2035年以降の合成燃料(e-fuel)を使用する内燃機関搭載車の販売継続を求めて反対する意向を示したため、採択を延期。イタリア、ポーランド、ブルガリア、チェコも反対の意向を示し、欧州議会との暫定合意後に加盟国が合意テキストに異議を唱える異例の事態に陥っていた。

今回採択された改正案は暫定合意に基づくテキストのままで修正はされていないと言われており、EUが2035年に全ての新車のゼロエミッション化に向けて電動化を推進するのは変わらない。EU理事会が同日発表した声明(3月27日付)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、ドイツとの協議の結果、欧州委は「ステークホルダーとの協議後、合成燃料など炭素中立な燃料のみを用いて走行する車両の2035年以降の販売について提案を行う」とする改正案の前文11項の内容を遅延なく実施すると表明。早期に合成燃料など非バイオ由来の再生可能燃料(RFNBO)を使用する車両の型式認証についての実施規則案を、また2023年秋に合成燃料のみを使用する車両のCO2排出削減への貢献に関する委任規則案を提案するとした。さらに、EU理事会あるいは欧州議会が同委任規則案を否決した場合も同委任規則案の内容を実施すべく、CO2排出基準規則の改正など他の立法措置を検討するとした。

ドイツが反対姿勢を示したのは、改正案は前文11項のとおり合成燃料利用への道を閉ざすものではないが、前文の規定は法的拘束力を持たないことへの懸念に加え、暫定合意後も合成燃料の扱いに不満を持っていた産業界(2022年11月1日記事参照)に近く、連立政権の一角を占める自由民主党(FDP)の意向もあったとみられる。

現地報道によると、EU理事会での採択の際、反対票を投じたのはポーランドのみで、イタリア、ルーマニア、ブルガリアは棄権した。採択ではイタリア、ポーランド、フィンランドの声明が記され、ポーランドは加盟国によってゼロエミッション化に伴う社会・経済的な影響は異なると反対した理由を説明した。再生可能燃料やバイオメタンの利用を推進したいイタリアとフィンランドは同改正案は技術中立の原則に沿っていないとの立場を示した。

欧州委、ドイツの要望受け入れも、合成燃料利用は限定的との見方も

欧州自動車工業会(ACEA)は28日、2035年に向けた各メーカーの事業計画に確実性がもたらされたと採択を歓迎した(ACEAのプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。合成燃料についてのドイツの要望を欧州委が受け入れたと言えるが、従来の燃料の数倍とされる価格がネックとなり、合成燃料利用の恩恵を受けるのは一部の高級車メーカーで、乗用車市場での普及は限定的とみられている。ACEAも、脱炭素化に向けては技術中立的なアプローチが最適とするが、その中核は電動化だとしている。

(滝澤祥子)

(EU)

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