ケニアで輸入品の知的財産権登録制度の運用開始を再延期
(ケニア)
ドバイ発
2023年03月06日
ケニアの模倣品対策機関(ACA)は、ケニアへの輸入品に関する知的財産権の登録(IPR Recordation)を義務付けた制度(注1)の運用開始を、当初予定の2023年1月1日から再延期していたことをジェトロの聞き取り(2月27日)に対して明らかにした。
ACAは、同日以降に知的財産権を登録していない状態でケニアに商品を輸入した権利者や輸入者に対して、貨物の差し止めや罰金などのペナルティーは科していない。しかし、知的財産権の登録自体は現状も法令上の義務であるため、ACAは権利者に対して引き続き登録を促している。
他方で、ACAは知的財産権登録制度と並行して、「ACA輸入許可(Import Permit)」と呼ばれる制度を2023年1月1日から新たに導入した(公告4/2022)。同日以降、ACAの輸入許可を事前に得ていない場合は商品をケニアに輸入できないとしているが、厳密な運用には至っていないもようだ。対象は、一部のHSコード(第85類:HSコード8508から8544までの電気・電子機器)に該当する製品だ。ACAは今後、重点項目として5つのカテゴリー(アルコール飲料、医薬品、衣料品、履物、化粧品)にも段階的に拡大することを計画している。具体的な時期は未定。
輸入許可の申請は、オンラインのKenTradeシステム(税関、標準局など貿易実務に必要な手続きを一括で行えるプラットフォーム)から輸入者が行う。ACAによれば、模倣品対策法の記録規則で輸入者が提出する様式ACA2Bのうち、知的財産権関連項目以外の事項を登録する。料金は20ドル。
同輸入許可制度は、ケニア歳入庁(KRA)の求める登録制度や、ケニア標準局(KEBS)の輸出前適合証明書(Pre-Export Verification of Conformity:PVOC)などの既存の登録制度とは別制度で、各機関に対応する登録がそれぞれ必要となる。
ACAは2022年に、知的財産権登録制度の運用開始を半年間延期していた(2022年5月30日記事参照)。再延期に踏み切ったのは、登録範囲の曖昧さ(注2)などから、各国の権利者から同制度への批判が殺到していたほか、当局の体制の脆弱(ぜいじゃく)さから事務処理が追い付かなかったためとみられる。今般の延期期間は未定だ。
他方で、新たに輸入許可と呼ばれる制度を突如開始したのは、模倣品対策自体の先延ばしを避けるべく、知的財産権登録制度の枠組みを流用するなどして、実務的な妥協点を模索したかたちだ。
(注1)本制度や登録の詳細は、各種記事(2022年5月9日記事、2022年10月アフリカ知財ニューススペシャルレター77号(2.4MB))を参照。ACAの登録ポータルサイト(AIMS)にも説明がある。
(注2)知的財産権の登録範囲については、法令やACAのガイドラインからは明らかではない。ACAからは「商標の登録は必須。まずはハウスマークや著名な商品名だけでも差し支えない」との回答を得ている。ただし、今後、登録範囲が拡充される可能性もある。
(関景輔)
(ケニア)
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