カカオのサプライチェーンのトレーサビリティーを強化
(コートジボワール、EU)
アビジャン発
2023年02月24日
コートジボワールのコーヒー・カカオ評議会(CCC)は2月2日、国内のカカオ農家に対し、カカオ豆のトレーサビリティーシステムを導入した「電子身分証」の交付を開始した。この電子カードシステムは、2023/2024収穫年度(2023年10月~2024年9月)が始まる10月1日から稼働予定だ。
CCCによると、このシステムにより、カカオ豆の農園から輸出港までの生産・流通プロセスを追跡可能とし、違法に栽培された豆を排除することに加えて、カードに統合されている電子決済・ウォレット機能を通じて、生産者に対し、買い上げ価格を保証できるとしている。産地では、政府が収穫年度ごとに設定する最低買い上げ保証価格を順守しない買い付け業者も多いという。
政府は、持続可能なカカオ産業の構築に向け、サプライチェーンの透明化、トレーサビリティーの確保に取り組んでおり、農家の収入向上や品質改善、違法な児童労働や森林伐採を防止するため農業センサスや農地マッピングによる管理強化、生産流通情報把握システムの導入を進めている。
この背景には、EUがカカオ、コーヒー、パーム油など特定の商品作物などを対象とする森林破壊防止のデューディリジェンス義務化規則案に合意したことがある(2022年12月14日記事参照)。同法が正式に承認されれば、EUを最大の貿易相手とするコートジボワールのカカオ輸出にも大きな影響を与えることが懸念され、政府はトレーサビリティーの確保など、早急な対応に迫られていた。
なお、世界最大のカカオ生産国のコートジボワールは長年にわたり、農地拡大のため森林を破壊していると批判されてきた。世界銀行によると、コートジボワールのカカオ分野はGDPの10~15%、輸出収入の40%を占めている。また、CCCによると、2019年の農業センサスでは、コートジボワールで99万5,000人のカカオ生産者を数え、農園の15%が保護林区域にあるとされた。
(渡辺久美子)
(コートジボワール、EU)
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