欧州委、包装材のリサイクルや再利用、過剰包装禁止を義務付ける規則案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年12月02日

欧州委員会は11月30日、2050年までの炭素中立を目指す欧州グリーン・ディールの循環型経済行動計画(2020年3月17日記事参照)に基づく政策パッケージの一環として、包装材と包装廃棄物に関する規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。規則案は包装材のリサイクルや再利用(リユース)の促進と包装廃棄物の削減を義務付ける。EUでは既に包装廃棄物の削減に向けた規制はあるものの、リサイクルや再利用の実施状況が低調なことなどから、包装材の使用量はむしろ増えている。この規則案は、こうした状況を改善するために、EU加盟国には包装廃棄物削減などの目標値を設定し、事業者に対しては包装材をリサイクル可能にすることや、包装材の再利用を義務付け、プラスチック包装の再生材利用率などを規定する。

まず、加盟国に対しては、人口1人当たりの包装廃棄物の排出量を、2030年までに2018年比で5%削減することを義務付ける。目標値は、2035年に10%、2040年に15%にそれぞれ引き上げる。軽量プラスチック袋の消費量は、2025年末までに1人当たり年間40枚以下に抑える措置を講じることを求める。その他、再利用の促進に向けて、あらゆる包装廃棄物の返却・分別回収制度、飲料用の使い捨てプラスチックボトルや金属製の缶類などを対象にしたデポジット制度、包装材の再利用や詰め替え(リフィル)を容易にする制度の整備も求める。ただし、原材料別のリサイクル目標値に関しては、現行の包装廃棄物指令からの変更はない。

包装材の製造業者に対しても、さまざまな義務が新たに課される。まず、原則として全ての包装材を2030年1月までにリサイクル可能な設計にすることを求める。ガラスや紙・段ボール、アルミニウム、プラスチックなどの特定の原材料に関しては、リサイクルが可能な割合に応じて、95%以上がリサイクル可能なグレードAから、70%未満のグレードEに分類。2030年1月以降はグレードEを実質的に禁止し、70%以上のグレードDをリサイクルが可能な設計の最低要件とする。プラスチック製包装材に関しては、2030年1月以降、種類に応じて10%から35%までのリサイクル済みプラスチックの最低使用要件を設定する。ティーバッグや、コーヒーカプセル、青果物に直接添付するシール、バラ売りの食品を分ける際などに利用する超軽量プラスチック袋については、同規則案の施行から2年後に堆肥化可能な設計にすることを義務付ける(2022年12月2日記事参照)。さらに、原材料や再利用の可能性などの情報を含むラベルとQRコードを運送用を除く包装材に貼付することも求める。

製造業者のほか、原材料の供給業者や輸入業者、卸売業者、輸送業者など包装材を扱う事業者もそれぞれ規制の対象となる。過剰包装を防止するため、最終消費者などへの運送用包装の空スペースを最大で40%までとする。また、レストランやカフェなどで消費する食品・飲料、ホテルの小型シャンプーなどを使い捨てプラスチックを用いて提供することを禁止する。大型家電の運送用包装や、コーヒーなど飲料のテークアウト販売の容器、調理済み食品の持ち帰り用の容器、アルコール飲料・水・ソフトドリンクの容器、運送用のパレットや包装材、保護材などを対象に、2030年1月以降に適用する再利用・詰め替えが可能な包装材の利用率の目標値を設定する。

この規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

(吉沼啓介)

(EU)

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