ジェトロなど現地駐在員による「海外知的財産権最新情勢セミナー」開催
(中南米、韓国、中国、香港、中東、アフリカ、欧州、米国、台湾、インド、東南アジア)
知的財産課
2022年12月27日
ジェトロは、海外9カ所(注1)の国・地域に駐在するジェトロ職員と、日本台湾交流協会の知財担当者の合計11人による知的財産最新情勢セミナーを12月15、16日の2日間、オンラインで開催。延べ500人以上が参加した。
セミナーでは、各国・地域の知財制度や法改正の動向、出願統計からみる知財全体像などに関する説明のほか、新型コロナウイルス禍における医薬品の特許や実施権、発明者としての人工知能(AI)など、時事トピックや制度面でのトピックなど、各地のタイムリーな話題も紹介された。
時事トピックでは、米国特許商標庁(USPTO)長官に2022年4月に就任したカティ・ビダル氏が、米国では多数の意見募集を実施しながら、特許適格性問題の検討など大きな問題に取り組む姿勢を示していることや、残り約2年と予見される任期中にどのような改善がなされるか期待が高まっているという展望を紹介した。また、中国では専利法が改正されたものの、専利法実施細則や専利審理指南が依然として未確定のため、運用ルールが定まっていない点や、悪意のある商標出願の削減や撲滅に向けた取り組みの1つとして、2022年1月に商標審査審理指南が施行された点などを紹介した。
制度面でのトピックでは、欧州で運用開始が迫っている欧州単一効特許(UP)・統一特許裁判所(UPC)制度について、ロードマップが公表され、発効に向けて着々と準備が進められているとした(注2)ほか、UPC協定発効時の留意点やオプトアウトのメリットとデメリットが説明された。
中東・アフリカでは、ケニアの模倣品対策機関(ACA)が輸入品に対する知的財産権登録の義務化を2023年1月1日から開始する点を紹介した(注3)。
参加者からは、「概況から詳細まで網羅的に情報収集ができた」「審査状況や審判制度の変更などの情報が得られ、大変有益だった」「現地の状況を聞いて、刺激と危機感を感じた」などのコメントが寄せられた。
このセミナーはオンデマンド配信をし、2023年1月13日午後11時59分まで講義部分を視聴できる(申し込み締め切りは同日午後5時まで)。
ジェトロは、世界各地で進出日系企業などによる知財問題研究グループ(IPG)を組織し、外部講師などを招いたセミナーの開催、会合を通じた情報交換、政府機関や現地プラットフォーマーとの意見交換などを実施している。今後も国内外で海外の知的財産権に関するセミナーなど各種情報発信をする予定だ。
(注1)中南米、韓国、中国、中東・アフリカ、欧州、米国、台湾、インド、東南アジア
(注2)統一特許裁判所(UPC)準備委員会は、UPC協定の発効予定日が2か月延期され、2023年6月1日となることを公表した。それに伴い、サンライズ期間の開始予定日も同年3月1日に延期される(2022年12月6日記事参照(297KB))。
(注3)登録範囲は、ケニアに輸入される商品に関する商標、著作権、商号、その他の形態のあらゆる知的財産権に及ぶ。しかし、当局は運営上、ハウスマークなど主要な商標のみを登録することを求めている。知財庁への商標登録とは別制度となっており、模倣品対策機関統合管理システム(AIMS)からオンライン登録が必要(2022年5月9日記事参照)となっている。ジェトロでは新制度への登録に関し、「ケニアACA知的財産登録制度の最新情報とシステム(AIMS)登録のヒント」で講演のオンデマンド配信を行っている(2023年3月31日まで視聴可能、申し込み不要)。
(藤本海香子)
(中南米、韓国、中国、香港、中東、アフリカ、欧州、米国、台湾、インド、東南アジア)
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