米議会諮問委、中国の非市場的慣行への対応策を提言、貿易関係の見直しも

(米国、中国、台湾、香港)

ニューヨーク発

2022年11月16日

米国連邦議会の諮問委員会である米中経済・安全保障調査委員会(USCC)は11月15日、2022年の年次報告書を議会に提出外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。報告書では、中国共産党の意思決定、米中経済・通商関係、米中安全保障・外交関係、台湾、香港の5章に分けて米中関係を評価し、議会が検討し得る対応について39の具体的な提言を示した。

USCCは中国共産党について、習近平国家主席への権力の集中を指摘した。習国家主席は過去10年で党の意思決定プロセスを再構築し、共産党が全ての政策決定を独占する体制をつくったとの見方を示した。こうした傾向が今後も続いた場合、中国による経済政策の予見可能性の低下や、より積極的な外交政策、より攻撃的な軍事的姿勢という課題に米国は直面すると予測している。

中国との通商関係を巡っては、「長年にわたり中国に関与し、歪曲(わいきょく)的な通商慣行を放棄するよう中国を説得する試みを行ったが、その取り組みは成功していないことは明らかだ」と訴えた。その上で、中国の行動を変えるのではなく、中国の国家資本主義に対する強靭(きょうじん)性を高める新たな戦略を立てる重要性を強調した。WTOで中国の非市場的慣行に対処するルールや手続きを導入できない中、各種の貿易是正措置の実施と、米国と同様に中国による課題に直面する他国との連携を求めた。

具体的には、中国がWTOに加盟するに当たり、米中が1999年に結んだ市場アクセスに関する2国間合意について、中国の順守状況を評価する報告書を作成するよう政権に指示し、政権が合意違反を結論付けた場合には、議会に中国との恒久的正常貿易関係(PNTR)を即時に停止する法案を検討するよう推奨した。

バイデン政権が中国への規制を強めている輸出管理分野(2022年11月1日記事参照)では、商務省に対し、外国直接製品ルール(FDP、注)の執行と同ルールに基づく中国向けの輸出許可件数などについて、半年ごとに議会へ報告するよう指示することを提案した。

USCCは、レアアースなどの米国にとって重要な物資のサプライチェーンが中国に依存していることにも警鐘を鳴らした。サプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性を是正するための最重要課題には、供給網の可視化や代替サプライヤーの欠如などを挙げた。それらへの対応策として、議会は政権に対し、米国のサプライチェーンの強靭性確保の取り組みを監督・調整する部署を設置し、重要サプライチェーンのマッピング・監視・分析を行うよう指示すべきと提言した。

台湾に関しては、中国が外交や経済的威圧行為に加え、軍事力の誇示を強めていると警戒感を示した。USCCは議会に対し、中国が台湾への武力攻撃や海上封鎖などの敵対的行動を取った際、制裁やその他の経済措置を課す計画を策定する省庁横断の常設委員会を創設する法案を制定するよう要請した。

(注)米国外で生産された製品であっても、米国製の技術・ソフトウエアを用いている場合に、輸出管理規則(EAR)の対象として、輸出などについて事前の許可申請を求めるルール。

(甲斐野裕之)

(米国、中国、台湾、香港)

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