EU、排出量取引対象外のGHG排出量6割部分で、2030年までに2005年比4割削減で合意

(EU)

ブリュッセル発

2022年11月15日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は11月8日、加盟国の排出削減の分担に関する規則(ESR)の改正について、暫定合意に達した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ESR規則は、域内の温室効果ガス(GHG)排出量の約6割を占める道路輸送や建物、農業、小規模産業施設、廃棄物処理といったEU排出量取引制度(EU ETS、2021年7月16日記事参照)の適用外の分野を対象にGHG削減目標を課すもの。現行のESR規則は、EU全体で2030年までに2005年比でGHGの29%削減を規定している。欧州委員会は2021年7月14日、EU全体で2030年までに1990年比でGHGの少なくとも55%削減という新たな目標に関する合意(2021年4月22日記事参照)を受け、その達成に向けた政策パッケージ「Fit for 55」(2021年7月15日記事参照、注)の一部としてESR規則の改正案を発表。今回の暫定合意は、欧州委が提案した改正案をおおむね維持している。

今回の暫定合意ではまず、対象分野の2030年までのEU全体の削減目標を、現行目標の29%から11ポイント引き上げて40%とする。また、1人当たりのGDPなどを考慮して設定している加盟国別の法的拘束力を持った削減目標に関しても、一部の加盟国を除き、原則として現行目標から10ポイントから12ポイント引き上げる。これにより、削減目標が最大となるスウェーデン(現行目標は2005年比で40%)、デンマーク(同39%)、ドイツ(同38%)などは削減目標が50%に、最小となるブルガリア(同0%)は削減目標が10%となる。削減方法については加盟国がそれぞれ決定するものの、道路輸送分野では公共交通の促進、建物分野ではエネルギー効率を改善するための改装や冷暖房システムの導入などが想定されている。また、年間削減目標を超えた削減分の翌年以降への繰り越し、年間削減目標が達成できない場合の翌年削減予定分の前倒しでの利用、加盟国間での余剰削減分の売買など、加盟国ごとの削減目標の達成に向けて活用を認めている制度も修正する。

今回の暫定合意の改正案は今後、EU理事会と欧州議会での正式な採択を経て、EU官報への掲載後に施行される。なお、暫定合意のテキストは11月14日時点では公表されていない。

(注)調査レポート『欧州グリーン・ディール』の最新動向(第1回)政策パッケージ「Fit for 55」の概要と気候・エネルギー目標(2021年12月)参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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