調達多角化に向けた新水素戦略を発表、助成案件も公募
(ベルギー)
ブリュッセル発
2022年10月26日
ベルギー連邦政府のアレクサンドル・ド・クロー首相は10月18日、再生可能エネルギー由来のグリーン水素の調達の多角化や戦略的貯蔵、港湾を活用した水素の輸入・輸送ハブ機能の強化に重点を置いた、新しい水素戦略を発表した(プレスリリース、フランス語)。連邦政府は、2021年10月にすでに水素戦略を策定していたが、昨今の欧州のエネルギー事情の変化に伴い、戦略を練り直した。
連邦政府は、水素は地域的に偏在する化石燃料と異なり、再生可能エネルギーを豊富に活用できる国であれば、安価に製造ができ、地政学的要因に左右されない「民主的な」燃料だとし、昨今の情勢に鑑み、その重要性を指摘している。中でもグリーン水素の輸入は、ベルギーにとって拡大するエネルギー需要を満たす最も経済的な方法であり、調達の多角化などを通じて欧州における同国の水素の輸送ハブとしての地位を強化することにつながる、と新しい水素戦略の意義を強調した。
新しい戦略では、水素調達の多角化に向けて、以下の3つの経路を想定している。
・北海経由:ベルギー、デンマーク、ドイツ、オランダが、2030年までに北海洋上の風力発電容量を65ギガワット(GW)、グリーン水素の生産能力を20GWまで拡大することで合意(2022年5月30日付記事参照)するなど、北海自体が、欧州における巨大なグリーン電力発電所へ変わりつつある。これを受け、ベルギーの海岸でも北海洋上で発電された余剰電力を活用した水素製造を目指す。また、北海の電力と水素輸送ネットワーク網の構築が、どのように相互補完できるかについての調査を開始する。
・南部経由:南欧や北アフリカからパイプラインで水素を輸入する。エネルギーインフラ企業が参画する欧州内の水素輸送網構築のための「欧州水素バックボーン(EHB)」イニシアチブでは、2030年までにスペイン北部からベルギーに至るパイプラインの整備を目指しており、ベルギーのエネルギーインフラ企業フラクシーズも参画。
・海上経由:船舶を活用し、アンモニア、メタノールなどの水素派生製品を輸入する。水素派生製品はベルギーの鉄鋼や化学業界、海運などをはじめとして需要が大きく、その戦略的な貯蔵についても優先的に進める。
連邦政府は、上記の戦略を強化するため、水素輸送インフラの整備につながるプロジェクトの公募も発表した。水素の輸入や輸送強化に資する技術やインフラに関する調査、開発、実証プロジェクトで、2026年7月31日までに完了するものが対象となり、10万~800万ユーロが助成される。
(大中登紀子)
(ベルギー)
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