インフレ抑制のため基礎物資輸入登録企業に対する関税と許認可を免除

(メキシコ)

メキシコ発

2022年10月24日

メキシコ政府は10月19日、連邦官報で「輸入関税の撤廃および基礎物資におけるさまざまな行政上の便宜を付与する政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公布した。同政令は、食料品などの価格上昇抑制を目的としたインフレ率上昇抑制策(PACIC)の一環として、食料品や日用品の輸入関税撤廃と行政手続きの免除を図るもの。PACICは、5月16日に第1次協定(2022年5月19日記事参照)、10月3日に第2次協定(2022年10月7日記事参照)を食品製造企業や流通企業と締結している。

関税撤廃対象品目についてはHSコード8桁分類で80品目の関税が撤廃され、5月の第1次協定と比べると家畜用の黄色トウモロコシやトイレットペーパーなど14品目が追加されたが、後述する輸入業者登録に登録した企業のみの恩典となる。

輸入関税や許認可取得などの手続きの免除を受けるためには、国税庁(SAT)が管理する「基礎物資の輸入業者登録」への登録が必要。登録要件は政令第2条に基づき、(I)一般輸入業者登録があること、(II)事業活動や業種が輸入する商品と関連すること、(III)政令第1条の商品を輸入した実績、(IV)関連義務やコンプライアンスの達成を請け負うこと、(V)SATが細則で定めるその他の要件を満たすこと、となっている。

政令第3条に基づき、輸入者は輸入時に自由書式の書簡において、輸入商品や輸入税関の情報に加え、非関税規制に基づき要求される食品衛生や安全条件を輸入商品が満たすこと、これに反した場合は罰則を受けることを宣誓し、全責任を負うことになる。また、トウモロコシの場合は、遺伝子組み換え食品に関するバイオセーフティー規制を順守する必要がある。「基礎物資の輸入業者登録」に登録された輸入者はシングルユニバーサルライセンス(総括的輸入許可)を付与され、上記品目の輸入に際し、関税の支払いと非関税規制に基づく手続きを免除される。政令の有効期限は2023年2月28日だが、輸入者が同期限内に政府と契約を締結した場合、2023年12月31日まで延長される可能性がある。

輸入品に関する安全性に懸念の声も

ビクトル・ビジャロボス農業農村開発相は、国民のリスクを防ぐために基礎物資の輸入には政府の監督が必要であることに言及したうえで、「基礎物資の輸入と物流を簡素化するために輸入者にシングルユニバーサルを付与することで、供給量を増やしインフレを抑制する」と説明した。また、この措置がメキシコの貿易相手国に与える影響はないと述べている(「レフォルマ」紙10月20日)。

一方で、農業市場コンサルタントグループ会長(GCMA)のフアン・カルロス・アナヤ氏は「官報では輸入品目で定義され、実際に消費される最終製品がわからないため、消費者保護検察庁(PROFECO)が輸入者の協定順守を監視することは困難だ」と発言した。さらに、この措置は恩恵を受ける企業を少数に限定し、トルティーヤ店などの中小企業を排除することになると指摘している(「レフォルマ」紙10月20日)。

(阿部眞弘)

(メキシコ)

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